「お金だけが知っている」

タイトルを見ただけでピンとくる方もいらっしゃるかと思います。そうなんです、邱先生の著書のタイトルなのです。その中で「どこがこの次の経済大国になるかは、ヒトよりカネのほうがよく知っている。カネはどこに行けばお金が儲かるかを本能的に知っているからだ」と書かれています。

今日、7月1日は香港の中国返還(香港特別行政区設立)記念日に当たり、香港市場はお休みとなります。しかし、中国株の関係者(投資銀行や証券アナリスト、経済紙記者)にとって神経をとがらせる一日になるのではないかと遠ばせながら私も見守っています。

というのも、市場では、深センと香港市場の相互乗り入れの「直通車」の開通時期が本日発表されるのではないかと期待されているからです。上海・香港直通車が2014年11月に開通され、システムの異なる両市場の直接取引が実現されました。資本市場開放の成功例として内外に示された格好で、上海・香港に続き「深セン・香港の直通車」もあるべきだと期待されていましたが、昨年後半からの市場の暴落で伸ばし伸ばしとなったのです。

開通の時期発表について、5月の全人代議長の張徳江訪港や6月のMSCI新興国指数のA株組入れ決定、EU離脱に関するイギリスの国民投票が行った後、そして本日7月1日の返還記念日と憶測されましたが、本日現在発表もなく「深セン香港直通車」はオオカミ少年になったのかと一部落胆の声も聞こえるようになりました。しかし「お金だけが知っている」ように、香港市場には5月末ごろから毎日数十億元単位の(香港株の)買い越しが続き、6月末現在、上海・香港直通車の香港株投資限度額2500億元の内、残高(未使用枠)は23%相当の593億元となり、一日平均20億元程度の買い越しが続けば一ヶ月前後で限度額いっぱいとなることが迫られています。

今月28日、香港株の買い越し額は32億元に達し、43日営業日連続の買い越しとなったことを受け、香港証券取引所の李小加総裁は記者会見で「限度額いっぱいで買いたくて買えないことはない。限度額いっぱいになった場合、相応の対応策を打ち立てる」と限度枠拡大の可能性について言及しましたが、市場では、上海・香港直通車の限度額がいっぱいになった場合、深セン・香港直通車にバトンタッチするのではないかと期待する声が出ています。

上海・香港直通車の前例では、両市場に同時上場している銘柄で、開通前後株価の低いH株(上場の銘柄)が大きく上昇した経験がありました。AH同時上場の銘柄は合計88社ありますが、その内、深センと香港市場で同時に上場している銘柄はわずか17社です。深セン・香港直通車期待で、特に開きの大きい銘柄に資金が流れ、その差を縮めようという動きがすでに出始めています。

では、香港市場に流れているカネはどのような銘柄に投じられているのでしょうか。すでに明らかにされている上海・香港直通車対象株の上位10社(金額ベース)は次の通りです。香港上海銀行、建設銀行、工商銀行、招商銀行、テンセント、中国銀行、中信銀行、中国宏橋、中国神華、農業銀行の10社で、銀行が半数以上占めていることが分かります。

世界の金融市場は、イギリスのEU離脱で大きく揺れ動いています。人間が躊躇している間にお金は人間より先に動いています。お金の流れをぜひキャッチしてほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

背水の陣の古戦場に繋がる小路(石家庄郊外)

 

<お知らせ>中国勉強会 は7月7日(木)都内にて開催。中国の最新情報や企業訪問の様子、イギリスのEU離脱の影響などについてお話しいたします。詳細は当社HPにて。

 

 

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