なぜこのタイミング?

年を明けて上昇を続けてきた香港市場(ハンセン株価指数)ですが、21日、香港のメインバンク、香港上海銀行(HSBC)が前年比予想を上回る62.3%の減益という決算発表で株価が5%急落し、指数構成銘柄として10%のシェアを占める同社株安でハンセン指数も24000Pの大台を割り切って取引を終えました。

ところが、本日(22日)は寄付きからハンセン指数は再び24000台を回復し、香港市場に内外からの資金が依然流れていることが伺えます。

香港市場の魅力について、このコラムでこれまで何度も触れていますが、中国銀行業協会と香港証券取引所の巴曙松首席エコノミストは、中国の保険業資金の海外投資解禁について、香港市場は保険資金の海外投資先の無二の選択であるとして、香港は国際金融センターとして市場が成熟であること、多次元の投資家構成で長期的投資に向いていること、キャパシティが十分大きく、資産セクターも豊富で資産価格も相対的に理性的であること、直接融資の割合が高く、機関投資家の影響力が大きいこと、さらに、企業価値(株価)の評価や市場の変動性、AH株の割引率、配当性向、世界的資産配分などの観点でも香港市場は海外投資の第一候補地であることに変わりはないと論文で力説しています。

上海高級金融大学の銭軍教授が香港市場全上場企業の時価総額を調べたところ、470社の内陸からの中国企業が香港市場時価総額の60%を占めていることが明らかになっています。

投資資金が香港に流れていると同時に上場企業も、その活動拠点を香港に置くケースが増えています。DTZ/Cushman & Wakefieldの統計によると昨年香港のセントラルで成約されたオフィスの新規契約面積は50万sq.ft.に達し、その60%は中国系企業からだと言います。2015年の同割合は31%だったのを見ると、香港で上場するだけではなく、活動拠点も香港に置く企業が増えてきていることを伺えます。

当社視察団は年に2,3回ほど香港を回っていますが、その理由も多くの企業がその窓口を香港に置いてあることで、実際、昨年8月バッテリーの天能動力を訪ねようと、指示された住所に皆様と一緒に出向いたら、その同じフロアに昨年6月石家庄で訪ねた「石薬集団」の香港オフィスもあることに驚いたものです。

では、なぜいま、このタイミングで香港に資金が流れているのでしょうか。

中国に生まれ、日本語化もした「天の時、地の利、人の和」と言う言葉があります。投資のタイミングも金融センターとしての香港の位置付けも投資商品の魅力もすべて揃ったことが原因だと言えます。

中国経済はL字型と定義されて以来、経済は回復までと言えなくても底堅く推移し、製造業復活のバロメーターとしてチェックしている製紙業界の業績がいち早く回復しているのを見ると、いよいよこれから製造業も回復に向かうのではないかと市場でも判断されています。

昨年来切下げに向かった人民元の為替も安定し、元資産の価値も改めて認識されるようになり、海外投資家も中国投資に転じていることも指数を押し上げた要因の一つとなっています。

今年に入り、資本の海外流出を抑えようと規制に踏み出していますが、直通車経由の香港投資は対象外で、香港市場は海外投資の窓口であると同時に国内資金の受け皿にもなっています。

さらに、今年は香港の中国返還20周年と秋には5年に一度の党大会が控えています。金融市場の安定は当局にとっても望むことで、大きく下落した場合の対策も講じられていることと考えられます。

中国株投資家にぜひこの流れに乗ってほしいと願っています。

 

 

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