インフレの恩恵を

先週まで日経新聞は「日本国債」を特集しました。14日付紙面に「敗戦後、失われた預金(日本国債)財政・金融一体化に警鐘」というタイトルで取り上げられています。同じことを経済学の教科書や専門誌なども以前から取上げ、一般的にも知り渡れることですが、敢えてまた特集することは「警鐘を鳴らす」ことに意義があると考えられます。

先週末、T証券勤めの知人と久しぶりに情報交換を行いました。中国株の第一人者で今でも中国株セミナーなど「中国株ファン」の広がりに尽力されています。氏曰く、中国のこの30年の発展は世界中どこの国を見ても前例はないと断言しています。

60代と50代の二人ですが、氏が就職の歳、初任給は10万円弱でしたが、40年近く経って現在の大学新卒者の初任給は倍前後の20万円強となっています。バブル期を経て日本経済は20年以上もデフレに苦しまれています。

一方、日本のバブル期が終焉を迎えた頃に来日した私の例ですが、大卒で公務員でもあり、マスコミ系という自他ともに「出世コース」と認めている場合の当時のサラリーは120元(当時の為替は1元=約25円)だったのです。30年近く経って、先日当社HP「中国経済News & topics」(8月11日付)で取り上げましたが、北京市の最低賃金はこれまでの1720元から10%引上げられて1890元に、この9月から適用されることになったのです。

最低賃金だけ見ても15.5倍上がり、2015年の大学新卒者の平均サラリーは3726元(約57000円)(『就職青書:2016中国大学生就職レポート』より)で、30年近くで実に31倍まで膨れ上がったのです。(厳密にいうと、私の初任給は54元だったので、初任給の比較では実に69倍に)

中国の成長減速で、ここ2年ほどCPI(消費者物価指数)の伸び率は2%~3%台で推移していますが、M2の伸び率はここ数年平均13%、1980年代に遡って、この30数年、平均伸び率は22.45%に達し、隠れインフレ率(統計局発表と違う実感インフレ)は11.9%に達すると言います。M2の供給量は2006年に記録の30兆元を突破してから、今年はついにGDPの約2.2倍に当たる141兆元の史上最高を記録し、2020年には220兆元に達すると見込まれ、経済のパイがさらに拡大していくものと思われます。

20年ほど前、北京や上海に3000万円程度のマンションに投資した場合、現在価値は凡そ1億円。インフレに伴い、資産価値が膨れ上がったのです。

インフレはその国で暮らしている国民にとって、通貨目減りの憎らしい悪魔のようなものですが、しかし海外投資家にとっては、企業の商品価値が上がり、企業の時価総額も上昇し、株価が連れ高となります。居住者にとって、収入または株価が上昇した分、インフレで一部帳消しされますが、海外投資家がその影響を受けることはありません。そのような意味で、インフレの恩恵を受けるのは海外投資家だけなのです。過度なインフレは通貨を紙くずに近い状況に引き摺り下ろされますが、多額の貿易黒字を抱える中国ならその点も安心できます。

インフレ対策には、不動産や金、米ドル、株式など様々とありますが、持たざるリスクとは何もしないことです。不動産にかつてチャンスがありましたが、「深港通」の開通で中国株の順番が回ってきたと言えます。情報を持つ人の勝ちです。

 

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