ジョージ・ソロスのおかげで誕生したETF

ハンセン指数は1964年100Pから始動したもので、今月7日の終値、21328Pまで、52年間で210倍上昇しました。配当金などを考慮しますと、53330Pになりますので、52年間で実に533倍上昇したことになります。複利で計算すると利回り率は12.8%になり、世界の市場で比べてみても決して悪い数字ではありません。

初心者に、ETFが良いと申したのには、初心者にとって個別銘柄の選択が難しいからです。日経平均と同様、市場の上げ下げの参考となるのに良く取り上げられるのはS&P500指数があります。1957年、当時S&P500に選ばれた500社のうち、40年後の1997年、同指数に居残ったのはわずか74社で、残り85%に相当する426社が同指数から外れたことになります。

構成銘柄の入れ替えはよくある話ですが、外れた会社は、業績ダウンか買収、更生など指数銘柄としては相応しくなくなったことで共通していると考えられます。そこで注目されるのは、ハンセン指数連動型上場投資信託――トラッカー・ファンド(盈富基金)です。実はこのトラッカー・ファンド、投資家ジョージ・ソロス氏とも大いに関係しています。1997年のアジアの金融危機を覚えている方も多いと思います。ヘッジファンドを率いるソロス氏はタイやマレーシアの通貨を狙撃して完勝の勢いでその矛先を香港ドルに向けたのです。香港ドルの空売りを仕掛けて為替を下落させ、香港金融当局は為替を維持するため金利を上げますが、その反動で株式市場が暴落します。そこでヘッジファンドはハンセン指数の先物に空売りを仕掛けて利益を上げようとするのです。香港ドル防衛戦とものちに言われる金融当局とソロス氏が率いるヘッジファンドとの戦いは熾烈を極め、ハンセン指数を死守するため、当局は1181億香港ドルを投じて指数構成銘柄を買い支えたのです。おかげでソロス氏はアジアの金融危機で唯一儲けを出すことなく香港市場から撤退したのです。

しかし、ソロス氏との「戦い」で買い支えた1180億香港ドルの株をどう処分するかが金融当局にとってまた難題となったのです。直接売却すると、市場の暴落につながりかねないし、現金化しないと、財政としても辻褄が合わなくなります。そこにできたのが、トラッカー・ファンドです。投資家に購入してもらうために、信託の手数料としてわずか0.03%を設けるほか、毎年2回配当を安定的に実施するなど、魅力溢れるファンドにしたのです。そういった当局の「お墨付き」があって現在も人気あるファンドの一つです。株価指数連動型なので、変動はもちろんあります。香港上場の株式はどういう動き方をしているのか、勉強がてらという初心者向きの銘柄(ファンド)ではないかと考えます。

 

 

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