パートナーシップ関係に変わりはない

前回、米国次期大統領選に勝ったトランプ氏の中国でのビジネスについて取り上げました。大統領としての報酬も在任期間中1㌦しかもらわないと明言した氏の商業帝国の中で、中国ビジネスは微々たるものであることに間違いないでしょう。

 

米誌「The Journal of Labor Economics」は1999年から2011年まで、中国からの輸入商品の急増で、アメリカの雇用が200万以上も失われたという論文が発表され、トランプ氏も選挙期間中、これをもとに、製造業のアメリカ回帰と中国からの輸入品について45%の関税をかけると主張しました。

 

しかし、中国から米国向け輸出の商品には付加価値の低い繊維や家電製品ばかりではありません。iPhoneをつくるアップル社は世界で18の組立工場を展開中ですが、米国に2社、南米とヨーロッパに1社ずつのほか、残り14社は中国にあり、世界中で売られているiPhoneのほとんどが実は中国で組み立てられています。

 

かつて製靴メーカーを例にして、シューズを中国の縫製工場で作って10ドルでヨーロッパや米国向け輸出し、輸出先国では60ドルで売られていることを邱先生は講演会などで取り上げたことがあります。

同様に、初代iPhoneが米国本土での販売価格は553ドルで、その内アップル社は360ドル、部品提供の日本や韓国、台湾そして米本土の企業の分け前は187ドル、残り約6.5ドルは富士康など中国の工場の取り分になるので、「黒字は中国にあって、利益はアメリカにある」と言われる所以です。中国のインフラを考えると、アップル社やフォックスコン(富士康)は人件費の高い米国や人件費の安い東南アジアにその工場を移すことを真剣に考えるのかはなはだ疑問に思います。

 

経済のグルーバル化は国境を無くしたとついこの間まで謳歌されましたが、

「政治の本土化」で、ポピュリズムが台頭し、保護主義が再び主流になる懸念が出ています。

 

米中間で、かつて「新型の大国関係」、つまり、1.衝突・対抗の回避、2.核心的利益と主要な懸念の相互尊重、3.アジア太平洋における協力と世界的課題に対する共同行動を習近平国家主席とオバマ大統領との間で確認されています。

14日、電話会談した習近平氏とトランプ氏とは、早期会談で合意しましたが、上記「新型大国関係」を維持できるのか、それともトランプ氏から注文が出るのか両大国の今後を占う試金石になります。

 

中国側にとって、米の貿易保護主義よりも、グルーバルバリューチェーン(国際分業)の中で、川上を制することができるかどうかが課題です。そうした視点で中国の上場企業を見る時には、今まさに構造転換の苦しい時期に差し掛かっていることが分かります。

しかし、グルーバル化は双方の利益が重なっているからこそ成り立っています。互恵関係のパートナーシップは今後も維持されるだろうと見ています。

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