三度目の正直なるか

5月31日、中国(上海・深セン)A株市場に買いから売りを差し引いた資金流入は947億元、史上最高を記録し、おかげで上海A株指数は3.34%、深セン創業版指数は4.92%高騰しました。A株市場への資金流入は昨年夏以降A株が暴落し、そして反騰した7月8日に758億元が最高でしたが、その記録をさらに更新したのです。

中国国家統計局は本日、5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は前月と同水準の50.1であることを発表しました。PMIは50を上回れば景況拡大を、下回れば悪化を示す指標の一つですが、市場予想の50.0をやや上回り、好不況の境目とされる50を超えるのは3カ月連続ですが、依然低水準にとどまっていることが明らかになっています。景気の先行きに明るい材料が出ているわけでもないのに、株式市場が先走っているのにはわけがあります。

その一つはMSCIの新興国指数にA株を組み入れるかどうかを決定するのが今月15日に控えているからです。MSCIの新興国市場指数は23のマーケットが含まれています。そのうち南米は五つ、欧州、中東、アフリカ市場は十、そしてアジアは八つとなっています。アジアはマーケット的に三分の一強を占めますが、指数での割合は凡そ三分の二の70.25%を占め、さらにそのうちの28%は中国市場が占めています。

新興国市場のシェアは最高ですが、しかしその中には米国上場の中国概念株や香港上場の内陸の企業が含まれていますが、本土のA株が組み入れられてないのが現状です。MSCIの指数に組み入れられると、インデックスファンドやアクティブファンドの投資対象になり、市場に資金が流れるほか、信頼度が高まり、機関投資家や個人投資家にも買い安心感が広がります。MSCIはこれまで2度にわたってA株の組み入れについて議論を行ってきましたが、投資枠の配分(限度額の制限)、資金流動の規制、受益者所有権などでMSCIの基準に達していないことを理由に組み入れを見送られた経緯があります。

昨年来、証券監督管理委員会では上記問題点をめぐり逐一改善措置を取り、市場の開放と規制緩和に取り組んできました。直近では、昨年の株式市場の暴落の際、上場企業は自己都合で一斉に取引停止したことも問題点の一つとしてMSCIに指摘された後、先週金曜日(5月27日)、上海と深セン証券取引所は同時に『上場企業重要事項に伴う取引停止、再開に関するガイドライン』を発表し、取引停止ができる期日も明確に規定しました。6月15日のMSCIの決定に向けたラストスパートだと見られています。そこに、ゴールドマンサックスは昨日(31日)MSCIにA株が組み入れられる確率をこれまでの50%から70%まで引き上げるレポートを発表し、さらに6月15日までに深センと香港直接取引ができる直通車の開通時期も発表できれば、その可能性はさらに高まるとしています。

MSCIのA株組み入れ可否の決定は三度目を迎えます。A株の最近の高騰はこうしたことが背景にあると見られますが、長期的には経済のファンダメンタルズの改善こそ市場が左右されますので、現場を視察するチャンスのない方はどうぞ各種指標にご注目ください。

 

<お知らせ>
6月12日から18日にかけて北京、石家庄、上海、蘇州の上場企業を視察。全行程参加できない方は13日の北京と17日の上海だけ参加ご希望の方はどうぞ声をおかけください。

 

 

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