中央集権の結果か

BRICSの中でついに比較対象とされるのは中国とインドです。中国はインドに先駆けて発展し、世界第2位の経済大国に上り詰めたのですが、インドの投資環境について市場規模と成長性、人件費の安さ、英語によるコミュニケーション能力の高さ、安定した政治や社会情勢及び西側寄りの法制度などがあると指摘されます。

しかし、何故かその民主制度が逆にインド発展の足を引っ張っているようにも感じてしまいます。

ムンバイ証券取引所(BSE)訪問の際、Head StrategyのShankar Jadhav氏は「インドは中国のように強権による開発はできない」とインドの国内事情を語ってくれました。その後専用バスでムンバイ市内やデリー市内を見て回ると、建設中の高層ビル群が次々と目に入りますが、同時に高層ビル群の真下にはスラム街が延々と続くのもまた同時に目に映ってしまいます。

その後の訪問でも、中国の発展は中央集権によるものだというのが一般的認識のようだと受け止めてしまいました。

開発独裁という考え方は1970年から1980年代にかけて流行ったことがありましたが、中国の発展も中央集権のお蔭ではないかとの見方は根強く残っています。上海や北京などで高速道路や緑地公園を作るなど再開発やショッピングセンターやマンションを建てたりなどの際、政府号令で市民もすぐに退けてくれたというのがその味方の根拠のようです。

しかし、個人資産保護を目的とする「物権法」が2007年3月に全人代で採択され、同年10年1日から施行されました。それからは高速道路のど真ん中に民家一軒、立ちはだかっている写真つきの記事が頻繁に見るようになりました。個人財産が認められ、本人の同意がなければ政府と言えども昔ほど強行に進めることができなくなったのが現状です。

では、この30年近く高度成長を続けてきた中国が頼りにしてきた秘密兵器とは何だったのでしょうか。

私は中央集権よりもむしろ中央の権力の委譲や開放ではないかと考えます。中央政府が握っていた権力を適宜地方へ移譲し、または民間に開放することにより民間の活力がそれにより最大限に発揮することができるようになることによって高度成長が支えられてきたように考えます。

中央の権力の割譲や開放がなければ、民間部門に活力が生まれるわけがありません。国営や国有と縁のないテンセントやアリババ、HUAWEI、BYDなども生まれるわけがありません。

この仮説の裏付けとして李克強氏が首相就任して以来、「当内閣として、政府の許認可事項を3分の1削減していくこと」を内外に宣言し、今年3月の全人代の記者会見でこの目標は繰り上げて達成したと誇らしげに答えていたことです。

政府の権力移譲が進むほど中国経済、企業活動もますます活力に満ちていくようになりますが、権力の引き締めが行われていくと経済も委縮していく、そのような循環になるように考えます。インド訪問から帰って中国経済成長の因果関係についてこのように考えさせられました。

 

 

<お知らせ>

四環医薬マネージャーとの昼食会開催のお知らせ

四環医薬は、昨日2015年本決算を発表しました。取引再開・本決算発表に伴い、投資家担当マネージャーが4月来日することになりました。

4月10日(日)、同マネージャーとの昼食会を企画しました。決算内容や今後の新薬開発計画など懇談しながらお話を聞く計画です。関心のある方はお問い合わせください。詳細の案内を差し上げます。

 

 

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