人民元 SDR構成通貨入りへ

視察旅行(今月5日~12日)から戻ってもう一つ大きな出来事がありました。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、米国時間の13日、5年に一度のSDR(特別引出権)見直し評価で、人民元は「自由に取引できる」通貨の要件を満たしたと構成通貨に人民元を盛込むことが妥当との見解を示す声明を発表したと報じられました。

中国にとって念願の人民元国際化の重要なステップの一つとしてSDR構成通貨の採用は、最終的に今月30日のIMF理事会での投票で決定されることになりますが、採用された場合、米ドル、ユーロ、英ポンド、円に次ぐ5番目の通貨となり、加盟国の備蓄通貨ともなれ、IMFのお墨付きを得て国際通貨として認められることになります。

SDR入りのため、9月には、アメリカを、10月にイギリスを習近平氏が相次ぎ訪問し、シアトルのボーイング本社で同社ジェット機300機、合計380億米ドルに及ぶ契約とイギリスでは、原発建設を含む400億ボンドの契約を結んだと伝えられています。

氏の訪米、訪英に内外で評価が分かれていますが、SDR入りには、下記三つの要件を満たすことが条件とされます。

一つ目は、貿易の需要で、2014年中国の輸出は世界シェアの12.35%で世界一位(米国は8.85、ドイツは8%、日本は3.6%)で、貿易の要件をクリアしています。

二つ目は、国際決済銀行(BIS)の要件を満たすこと。BISの要件とは、人民元による債券(国債)の発行、通貨の自由兌換、人民元預金(備蓄)の三つです。

そして三つ目は、金利及び為替の自由化です。

人民元国債については、習氏の訪英中に、中国人民銀行(中央銀)はロンドンで50億元分の人民元国債を、建設銀行は10億米ドル相当の国債を、農業銀行は10億人民元の国債をそれぞれ発行することを発表しました。

中国経済の減速に伴い、貿易黒字は減少したものの、依然として黒字を維持し、この10月には616億米ドルの単月最高の黒字を出しています。黒字を維持する限り、人民元は海外に流出する機会はありません。BISの人民元預金という条件が満たされないことが続くので、海外の直接投資が元を海外に持っていく一番の近道で、それがボーイング社との380億米ドルとイギリスとの400億ボンドの投資に繋がったものと思われます。

ばらまきとの批判もありますが、中国の世界戦略が見え隠れています。

SDRは仮想通貨で現在180の国や地域が加盟し、金融危機対応のために通貨を融通し合うことが本来の目的とされています。現在、1SDRの構成は米㌦が0.66、ユーロが0.432、ボンドが0.111、円が12(円)と言う割合ですが、これに人民元が加わることになります。

7月15日の『徐さんの中国株』では、「SDR加入は遠退いた?」と取り上げていますが、今年夏以降の証券市場の暴騰暴落は人民元の国際化を引き延ばしたことに間違いはありません。

人民元の国際化はブレトンウッズ体制への挑戦との見方もありますが、現行の通貨体制を完備し、SDRの魅力を増進して、中国と世界にとってともに「勝つ」ことになると中央銀はコメントを発表しています。

金利と為替の自由兌換など国際通貨になるまでには、まだまだ改革が必要とされますが、投資先の通貨が強くなることは投資家にとっても心強いものです。

 

 

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