企業も個人も海外投資の時代

年末になりまして中国の投資環境について
国内で大きな議論が起きています。
そのきっかけは、「徐さんの中国株」でも
取り上げている自動車ガラス専門の
福耀ガラス(3606)の米国進出です。

 

同社は約6億米ドルを投資してオハイオ州で
新規工場を10月に立ち上げ、さらに3億ドル超を
追加して近隣の州で関連設備ラインを拡大していく
計画を同社曹徳旺会長が中国メディアの取材に対して
明らかにしています。米国進出の理由について、
高騰する中国の人件費のほか、エネルギーコスト、
融資コスト、輸送コスト、税コスト、償却・
土地コストなどを比較した結果、中国産と米国産に、
コスト面でのメリットはあまりないと表明しました。

 

しかし、これは決して中国離れではなく、
「当社製品の65%は中国の自動車メーカーに納入している。
35%は輸出向けで、なぜ中国から逃げる必要があるのか」と
曹会長は同社世界戦略の一環であることを強調しています。

 

11月中国の外貨準備高は前月比凡そ691億米ドル減少し、
残高は3兆52億と6年振り低い水準だったことが
外為管理局の発表で明らかになっています。
そして中国が保有する米国債の残高は10月末現在で
413億元減の1兆115億米ドルであることを
米財務省の統計で分かっています。

 

米利上げなどで、中国から資本が米国に
還流しているとの観測も出ていますが、
もう一つ見逃してはならない理由があります。
中国企業による海外直接投資(ODI)の急増です。

商務省が15日発表したところによると、
11月の対外直接投資額は昨年同月比で
76.5%増の157億で、11月までの投資額は
昨年比55.3%増の1617億ドル、その内、
M&Aは561件、金額にして824億ドルに上っています。

 

中国企業によるODIは2014年、
海外企業による中国直接投資(FDI)を上回って、
海外直接投資元年と位置付けられています。
ODIの誘因に国内のコスト増だけに留まらないことは
先進国の例でも明らかになっています。

 

アメリカや日本、韓国の例でも高度成長を経験した後、
いずれも海外進出のニーズが高まり、
その目的にも、資源の発掘やマーケットの分散、
生産効率(生産性)の向上、戦略的資産
(特許やブランド)の確保などの道を辿ってきています。

もちろん背後には、巨大な貯蓄があることは
言うまでもありません。

 

企業単位では、ODIになりますが、個人レベルでは、
不動産やその他金融投資がメインとなります。
中国外為管理局によると、11月の外為取引の出来高は
前月比42%増の2億3200万米ドルで、
人民元を米ドルに換えて海外投資を行なったり、
米ドル資産を保有したりする意欲が
旺盛であることが明らかになっています。

中国の個人保有金融資産は1800兆円で、
巨大マネーはいま投資先を物色しています。
企業も個人も海外投資の時代を迎えています。

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