供給者側改革 何をしようとしているのか

3月は中国の通常国会開催の月です。昨日(3日)は政治協商会議(略称「政協」)が開幕し、明日(5日)全国人民代表大会(略称「全人代」)が北京で開幕されます。

政協は、立法権がないので各界の著名人が国政について進言したり、提案したりする場で、一般的に「参議院」と例えられます。

一方、全人代は立法機関(衆議院相当)で、代議士は様々な提案が可能で、提案が採択された場合、法律として確定されます。

当社投資視察団でこれまで皆様と一緒に100社以上を訪問していますが、多くの場合、創業者や会長などは全人代の議員または政協の委員を務めていると紹介されますので、「議員」まはた「委員」は社会的「肩書き」にもなっています。

全人代が注目されるのは、何と言っても国務院(内閣)の国政運営について評価されることで、前年の成長目標がどれだけ実現でき、今後一年間の施政方針(内政外交)はどうなるか、政府活動報告がなされるからです。

今年の注目は何と言っても昨年11月に中央経済活動会議で打ち出された供給者側――サプライズサイド改革だろうと言われます。

では、その供給者側改革はいったい何を、どう改革しようとしているでしょうか。

供給者側改革とはズバリ国有企業改革のことです。中国経済の中で、もっとも活力があるのは言うまでもなく民間部門です。近年株式市場でも、テンセントやアリババ、百度、復星国際、BYDなどイノベーション型企業が大きく成長し、株価も高騰しています。

反面、独占的立場にあって、多くの経営資源を抱えているにも関わらず、上場した日(IPO)から株価が右肩下がりの企業を見てみるとその大半は国有企業であることが分かります。

しかし、国有企業が取り扱っているのは、例えば石油や電力、鉄鋼、石炭、セメントなど国民生活に必要不可欠のものばかりで、生まれつき革新のモチベーションがなく、① 地方保護主義による重複建設、②経済効果のほか、雇用創出の社会的責任も背負われているので、リストラも簡単にできないのが現状です。

視察団で訪問した上海電気や重慶機電などの説明会でも必ずと言っていいほど地元での雇用創出を実績として取り上げられています。

先日のG20に出席したポールソン米前財務長官が口にした「企業破産」はまさに供給者側改革の成功の鍵を握っているとマーケットが判断していると言えます。

その中国政府の決意を表している動きがすでに現れています。

今月1日ロイター通信が「関係筋」の話として、中国は今後2~3年の間、500~600万人の国有企業従業員をリストラする計画があると伝えられたほか、尹蔚民・人的資源と社会保障相は29日の記者会見で、期限の明言を避けながらも、石炭と鉄鋼業界の従業員180万人を順次削減していくだろうと表明しています。

そして2日、中国メディアの多くが、外電として鉄鋼、石炭業界のリストラ対象者のためにすでに1500億元の基金を用意していると伝え、これらの措置は供給者側改革を徹底させる中国政府の決意の表れだとコメントしています。

すでに電子部品やアルミ、建設機械などの業界で先行して供給者側改革を行われている企業も表れており、株価も動意を見せています。モノづくりの伝統企業が注目される年になりそうです。

 

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