偶然の一致か 陰謀論か

WTO加盟(2001年)して今年で15年目を迎えます。関税の引下げや市場の開放など約束事を一応果たしていますが、頑なに求められ、また頑なに死守している分野もあります。それが金融セクターです。

世界の金融危機は先進国、新興国などで数年置きに起きていますが、タイを震源地とした1998年のアジアの金融危機の際、香港がターゲットにされたことがあっても中国が巻き込まれたことは幸いにもなかったのです。イギリスボンドやタイバーツがヘッジファンドに狙われたのには、そこに隙があったからだと後々経済評論家の一致した見方のようですが、中国の金融市場はいまだ「安泰」の唯一考えられる理由としては「閉ざされた市場」だからだと言えます。

しかし市場の開放は時代の流れであり、TPPみたく聖域なき開放も今後更に求められます。その中でもわずかながら、QFIIや証券市場のETF、上海香港直通車の開通など、外資も中国の証券市場に参入できるようになりましたし、人民元のSDR構成通貨にも採択されましたので、一層の市場開放は時間の問題です。

そうした中で、昨年末から今年にかけて中国市場を狙ったと見られる動きが見られました。

夏の中国株の大暴落で、市場の動きにびくびくする投資家にとって噂にも敏感になり、「群集行動」に走りやすい時期に、中国経済及び株式市場に対する悲観的と取られるレポートが相次ぎ発表されました。

株式市場に関して、12月16日、中国株の中でもブルーチップス(優良銘柄)とされる国営の水処理の会社、北控水務の株価が急落しました。その理由として、前日にWSJは同社の会計に利益の水増し疑惑があるとしたレポートが発表され、投資銀行からも大量の売りが出たからです。

これに対して同社は即座に国際会議を開いて反論を行い、同じく外資系のドイツ銀行からはその翌日同社株価を引き上げるレポートを発表し、翌週から同社株は元に戻っています。

そして12月28日、今度は中国市場のB株が大幅に下落しました。翌日のメルマガで「B株大暴落」とのタイトルで、次のように取り上げました。

「13日間連続上昇のB株は、昨日昼過ぎから大暴落に見舞われ、上海Bは終値で前日比8%下落という4か月振りの下げ幅を記録した。その影響でA株もまたH株も大きく下がっている。B株の突然の暴落について、市場では1.B株は9月末から以降、70%も上昇し、昨日まで更に13日間連続の上昇で、年末を控えて利益確定の換金売りが出ていること。2.外為管理について、1月1日から新規管理システムが採用されると伝えられ、海外送金が新規システムに引っかからないように売買代金の31日着金のため、28日は売りの最終日になること。3.上海Bは米㌦決済、深センBは香港㌦決済で、元安に備えB株に投資する動きが9月以降加速し、B株が大幅に上昇し、一旦調整期に入ったこと、と見られている。」一般論としてお伝えしましたが、人民元対米ドルの為替が大幅な元安ドル高に便乗して、21、22の二日間はB株が買われて大幅に上昇した後、28日に一斉に売り出したことがB株暴落に繋がったことが隠された真実ではないかと考えられます。

そして年明け早々のA株市場は取引初日で、サーキットブレーカーが発動され、更に7日には、取引開始1時間も経たないうちに、5%ルール、7%ルールに引っかかり、繰り上げて取引が終了になったものです。

悲観論に続く、元安、株安など偶然に思えない一致が相次いでいることで、中国経済や株式市場への狙い撃ちではないかとの指摘も出ています。2016年は試練を受ける年となるでしょう。

 

 

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