工業的豊作貧乏の始まり

「工業的豊作貧乏」は邱先生の著書に出てくる言葉です。日本の高度成長期をつぶさに見てきた邱先生なりの観察で、また30年ほど前の日本経済を良く言い表した言葉でもあったのです。その言葉はいまの中国の現状にも良く当て嵌めてられますので「借用」させてもらいました。 

10月1日から7日にかけて大型連休があり、多くの人が海外旅行に出かけ、日本でも「爆買い」が話題になっていますが、そのような景気の良い話ばかりではもちろんありません。深センの隣、東莞に「金宝電子」と言う会社がありますが、多くの社員が連休後に工場に戻ったら生産ラインは跡形もなく消えてしまったと言います。連休の間、工場は丸ごとタイに移転したとのこと。 

かつて生産過剰業種として、鉄鋼関係や石炭、セメント、板ガラスなどを指摘しましたが、最近、「金宝電子」のような電子部品の工場閉鎖が再び話題になっています。 

10月に入ってから、携帯電話部品製造の福昌集団、中顕微、創仕の3社が倒産。福昌集団は社員3800名を抱え、HUAWEIとZTEのサプライヤーでもあり、訴訟と銀行の貸し剥がしで経営継続を断念したと言います。 

東莞には、液晶やPCBプリント基板、銅張積層板(CCL)、LED、精密部品などスマホやデジタル製品に使われる電子部品メーカーが多く不況にも強い業種とされましたが、A株上場の会社だけでも、恵倫晶体、正業科技、生益科技、勤上光電、キン勝精密の5社があり、納入先もサムスンやZTE、OPPOなど名立たるメーカーであるにもかかわらず、上半期の業績は対前年比で50%から800%下落していることが明らかになっています。 

市場では、昨年から今年にかけて東莞では、4000社も企業が清算したと伝えられていますが、市長の袁宝成氏は428社だと証言し、「東莞は輸出型経済で、海外市場の影響をもろに受けている」と、夜逃げなど工商登録を抹消せず経営を諦めたケースがあることを認めています。 

専門家は、東莞のケースはモデルチェンジとアップグレードなど中国経済の構造転換と同じ問題に直面し、伝統的OEMによる受注生産が維持できなくなり、自社のブランドがなく、特別な技術もなければ、時代に淘汰されるだろうと指摘しています。 

中国は長らく品不足で作れば売れたのは今までの30年でした。いかに作るかがこれまでの課題でしたが、いかに売るかが今後の課題となります。工業的豊作貧乏が日本に30年ほど遅れて訪れています。国全体もこれを乗り越えられるかこれからが正念場です。その中で生き残る会社はどれだけあるのか、来月の視察団で深センを訪問し、携帯電話を作る会社も1社訪問の予定で、深センの会社訪問だけでもと思われる方はどうぞお問い合わせください。現状をこの目でしっかりと確かめたいと思います。

 

 

徐さんの中国株の最新記事

工業的豊作貧乏の始まり」への2件のフィードバック

  1. SECRET: 0PASS:中国企業の淘汰、順調に進んでいるようですね。どんどん倒産すると、皆敬遠しがちですが、残った企業は強いですから、これからが楽しみです。本当に今は大バーゲンセールですよね。

  2. SECRET: 0PASS:>みんさん コメント有難うございます。ご指摘の通りです。生き残る企業はこれからの中国を支える大黒柱になりますので、そうした企業から投資対象を選ぶことですね。まだわずかですが、民間からも世界的スケールに成長した企業もありますのでこれからが面白いと思います。

コメントは停止中です。