投機筋に市場心理を左右させてはならない その2

    継続的元安などのベースはない

周小川中央銀総裁の話の続きです。中国経済の現状と先行きの見通しについてとても参考になるので第2話を取り上げることにします。

Q GDP伸び率の減速は外部が心配していることだ。過去十数年二桁の成長を達成してきたが、昨年は6.9%で市場心理を冷やした結果になった。

A 中国(経済)を見る際、次の二つの要素を見るべきだ。一つは2009年、2010年の世界経済に対する貢献が大きすぎたこと。中国の人口は世界人口の約20%を占めている。GDP(総額)は世界の10%未満だったが、しかし世界のGDPの伸び率に対する貢献度は50%を超えている。これは特殊な時期のことで、欧米では金融危機のショックを受けている時期に、中国は経済の刺激策を実行した。

両者間で大きな落差があった。これはノーマルな状態だと思ってはならない。50%を(評価の)基準にしてはならない。持続可能な状態ではないからだ。現在世界のGDP成長率に対する貢献度は約25%だが、これはノーマルに近い状態で、ハードランディングでも何もない。

もう一つは、これまでGDPを過度に強調したことだ。世界的に見てGDP伸び率と為替とは直接関係がない。例えば、GDPの伸び率が高すぎて経済が過熱し、インフレを引き起こすことにより通貨安の圧力に直面することもある。国際的にミスリードの議論があるが、その国の通貨はその国の競争力と経済の健康度合と密接に関係があると考えるべきだ。

理論と国際経験を研究すればわかることだが、為替と直接連動するファンダメンタルズはまず経常勘定のバランスである。2015年中国の経常勘定の黒字は依然高く、その内貿易黒字は史上最高の5981億米ドルとなっている。そしてもう一つは実効為替の変化、つまり、インフレの相対的変化だ。日米欧のインフレ目標は2%で、2015年末の中国の消費者物価指数(CPI)は1.4%と低いインフレで、低いインフレは通貨の安定に利するものだ。

要するに、当面の中国の国際収支は良好で、国際競争力も依然強いものだ。クロスボーダー資金フローは正常な範囲のことで人民元の通貨バスケットに対する為替レートも安定し、ファンダメンタルズから見ても継続的元安などのベースはない。

Q 人民元為替に対する国際的要素も重要だと思うが、最も重要視すべき要素は何だと思われるか。

A これはとても大事なことだ。すべてを網羅するつもりはないが、次の四つを取り上げたい。

一つ目は、世界経済は金融危機の時大きな困難に直面した。その後アメリカ経済は好転の兆しが現れ、ドル高に転じ、ユーロ、日本円が著しく下落した。しかし様々な要因で米㌦に対してわずかしか元安にならず、逆にユーロ、円に対して大幅に上昇した。マーケットでは米㌦に対して遅ればせながら、調整が必要だという認識が広まった。

二つ目には、FRBは量的緩和の縮小から完全終息に移行し、昨年12月には利上げを実施した。このことは世界通貨の資産配置と資本の流動に重要な影響を与えた。2013、2014年のFRBの政策変化は多くの国とりわけ新興経済国に対する影響が大きかったが、中国に対する影響は限られたものだ。しかし2015年とりわけ12月の利上げは中国に対する影響が顕著なものだった。これも遅ればせながらの修正だろうか。

三つ目には、国際ヘッジファンドの中国売り論調だ。ヘッジファンドは常にホットスポットを物色している。たまたま2015年中国の経済成長が減速し、金融市場にも大きな変動があった。以前ヘッジファンドの力はたいしたことがなかったが、金融危機の後、経済規模の大きい国々が量的緩和に踏み切り、遊資が驚くほど増えている。中国経済はいったいどうなっているのか、私たちは自信もあるし、辛抱もできる。各種(経済)指標が出揃えるのを待っていればいい。しかしこれはすでに空売りを掛けた人には(言っても)役に立たないものだ。ヘッジファンドは世論の力で短期勝負に出るつもりだからだ。

そして四つ目は、量的緩和の下、世界の様々な金融資産には、程度の差こそあれバブルが現れたり調整を余儀なくされたりしている。いまその調整待ちの状況にあり、誰がこのバブルをつぶすかというところまで来ている。調整は苦痛を伴うもので、責任が問われることのできる第三者を見つけたいものだ。<続く>

 

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