投機筋に市場心理を左右させてはならない その3

       資本流出と資本撤退は別もの

1月21日、投資家のジョージ・ソロス氏は、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)でブルームバーグの取材を受け、中国経済がハードランディングし、世界的なデフレにつながる恐れがあるとして、「ハードランディングは不可避」と言明した。更に「これは予想ではなく、実際に目にしていることだ」と述べています。

そして、1月31日、WSJはアメリカの不動産市場を空売りして大成功したKyle Bass氏が率いるHayman Capital Managementが85%の資産を今後3年間人民元とHKDが値下がりすることに賭けて元と香港ドルの売りを仕掛けていることを報じています。

Hayman Capital Managementの管理資産は10数億米ドルで、空売りを仕掛けても兆や千億単位の中国及び香港金融当局を相手に戦えることは到底思えません。むしろ情報戦の効果を期待しているのではないかと考えられます。

そうした中で、中国中央銀行の周総裁は2月の春節連休中にもかかわらず、談話を発表したのには大きな意味合いがあります。

輸出を増やしGDP数値を高めるために為替介入を行い、元安を誘導しているのではないかとの見方について、周総裁は「中国の貿易黒字は6000億米ドルに達し、GDPでの割合はかなり高い割合を占めている。輸出拡大のための切下げはまったく考えられない。2015年の黒字は国際商品(とりわけ原油)価格の下落によるものだ。中国の商品輸入量は前年比プラスになっている。特に原油がそうである。しかし原油価格は安くなっている。したがって国際商品価格の下落は中国経済の減速によるものだと決めつけてはいけない。去年からの米ドルに対しての元安はその他の通貨に対する米ドル高と国際、国内重大事件の影響及び短期間の市場心理(センチメント)の変動によるものだと見なければならない」とこのように述べています。

Q 中央銀行は「ホットマネー」をどう見ているか

A 「ホットマネー」については明確な定義はない。しかし投機マネーは国際収支のバランスを影響するほど力になっていない。投機マネーは主としてオフショア市場にある。クロスボーダーのQDIIとQFIIは金額的にも限られ、流出入共に管理下にある。しかし空売りや悲観論は市場に心理的に影響するだろう。現在の状況だと、輸出企業には、市場予想の影響で外為にチェンジするか、いつどこでチェンジするか、先物取引でのリスクヘッジ、投資の決済時間の調整、事前の外貨購入などすべてが外為市場の需給に影響を与える。

もう一つは、国内企業(外資系企業も含む)の場合、市場予想の影響で負債について調整を行う場合がある。ドル高によるドル債務の償還を減らし、人民元債務に切り替えたりしている。中国は経済規模が大きく、外債も少なくはない。2014年には8000億ドルに上り、多くの企業が調整を行う場合、中央銀行から大量にドルを買うことになる。

また人民元融資には、(融資獲得の)確率も高いし、融資コストも現在高くない。企業の予想に的外れではなかった場合、負債の調整は企業側の自主判断であって非難されるものでも何でもない。ただ、これらの調整は、例えば外債をすべて返済したらもう底が見えてしまう。まして外資系企業は親会社からのドル融資で貿易や投資をしているので、(外貨を)ゼロまで減らすことはできない。

したがって資本流出と資本撤退は別ものであると考えるべきである。企業のドルヘッジと外債調整は企業活動範囲のことで資本フローと外貨準備高の数字に影響はするが、資本撤退(逃避)ではない。ここ最近、世界の金融市場の不確定要素が増え、一部投機筋が中国を狙っている。通常、国際投機筋は中国をターゲットにすることはない。中国は規模が大きく、資源も多く、中国を相手にして戦うには簡単には利益にならない。事実、これまでほとんどが資本流入で、中にはホットマネーが含まれている可能性がある。その一部が機会を見て撤退してもおかしな話でもない。」

 

 

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