暴落の後に暴騰が

「株価のことを忘れてください。アリババの価値は理想に対する追求と顧客のための価値創造にある。顧客また株主のために価値を創造することこそ、アリババの価値がある」。世界同時株安の２５日の夜、株価が最高で１２０米ドルから最安値の５８．１６米ドルまでたたき売られたニューヨーク市場上場のアリババの張勇ＣＥＯは３万人を超える社員に対してこのように公開メッセージを送りました。「株価の暴落は初めてではないし、最後でもないだろう」と社員に対して本業に集中するよう呼びかけたのです。 

中国発世界同時株安を前にして、中国証券金融有限公司による買い支えや社会保障基金（年金）の株式投資解禁など、様々な介入策も市場の下落を食い止められない中、中国人民銀行（中央銀）は次の手に打って出ました。金利と準備率の同時引下げです。企業など実体経済の金利負担を引き下げると同時に、人民元の切下げによる市場からの資金流出懸念による流動性不足を補給するため、基準金利を0.25％、準備率を0.5％、それぞれ引下げを発表しました。 

世界同時株安を引き起こした主因は次の三つのことが考えられます。元の切下げ、PMI速報値の低下、７月本土株の暴落の三つです。 

元の切下げ（８月１１日）で、世界の投資家は、中国の実体経済ががたつき、通貨の切下げで経済を支えるところまで悪化したのかという疑念を持たせた結果に。 

更に、財新社（前HSBC）の８月のＰＭＩ速報値は（８月２１日発表）は47.1と２００９年３月以来、約６年半振りの低数値が上記疑念を裏付けたように再燃。 

また８月１８日以降、Ａ株は再び軟調。上海総合指数は６営業日で25％以上も暴落。わずか２週間で起きたネガティブな要素が重なって中国経済に対する不安が急速に広がったのです。今月のブログで、「中国経済ががたつくと、利益になる人は誰もいない」と触れたのは、ＧＤＰが７％に落ちてきたと言っても世界経済の牽引役であることに何ら変わりのないことで、今回の同時株安は正に市場が中国経済に対する不安から生まれたものだと言えます。 

しかしながら、元の切下げの本来の目的はＩＭＦのＳＤＲ加入のための措置で、通貨の切下げで「経済の立て直しを図ろうとしているのはむしろ日本の方だ」と日経新聞の取材に対して投資家のジム・ロジャーズ氏は元の切下げに失望しながらもこのように感想を漏らしていました。 

また、民間の固定資産投資の伸びは６月比で0.1％落ちたものの、依然11.3％の成長を維持し、「経済のファンダメンタルズに変化はなく、マクロ的には対策を打立てる空間はまだまだある」（李克強）状況にあり、市場で心配されるほど中国経済は救いようがないことになっているわけではありません。 

前出ジム・ロジャーズ氏は同取材で２，３週間ほど前から中国株を買っていると表明し、「来月か、来年か分からないが、中国経済は必ず復活する」と自信を示しました。 

0.5％の準備率の引下げで市場には７３００億元の流動性を供給することになりますが、しかし、依然18％ある準備率は主要国の中でも異様な高さで政府の金融政策には大きな空間が残されていると言えます。 

６月から始まった「中国株エクスプレス」は前期が８月いっぱいで終了となります。７月からの市場の大暴落で後追いの多い情報提供となりましたが、後フォローも含めてこの間通算１０社の情報を発信しています。個別企業の研究に一役立つことを願っています。 

なお、９月からの後期の募集が始まっています。発信したサンプルを確認してから申し込みを考えたい方は、どうぞお問い合わせフォームのその他をチェックしてご請求ください。暴落の後に暴騰が来るのが市場です。