架け橋ができた

香港を数十回訪問していますが、セントラルの更にど真ん中にある「長江中心」に入ったのは今回が初めてです。会社訪問を打診し、アポイントの住所を見ますと、2 queens Road Centralとなっているので、香港一の財閥グループ、長江実業の象徴的存在の「長江中心」だとすぐにわかりました。70階建ての最上階に、同グループの統帥、李嘉誠氏が現在も毎日出社していると言うので、テロ防止の関係もあるのでしょうから、全員パトポートの提示を求められ、ID登録を済ましてから入館が認められたのが昨日14日でした。

長江中心ロビー
長江中心ロビー

世界最高の地価で、賃料も1,2位を争う香港の一等地にオフィスを構えられるのはどれだけ利益を出している会社だろうかと、好奇心のまま指定された階に向かったら、「あれ、看板が見当たらないじゃないか」と不安に思いながらも受付フロントに確認したら、「こちらへどうぞ」とミーティングルームに案内されました。まもなく到着した訪問予定の「IGG」の投資家関係マネージャーのPeggy Maにそのことを確認したら、プレゼンテーションや決算発表などには利用していますが、コスト削減のため、普段はオフィスを特に構えていないと教えてくれました。「なかなか堅実な経営をされているな」と参加者一同も合点しました。

遡って14年前の2003年、香港に端を発し、世界を震撼させたSARS(重症急性呼吸器症候群)騒動で、香港経済がガタ落ちになり、香港経済の生命線の一つ、観光業に助け舟を差し上げようと、内陸の観光客向けに「自由行」(わがまま旅行)を解禁しました。それから10年以上、毎年千万単位の観光客が香港に押し寄せ、不動産業はじめホテルや飲食、小売りなど関連業界は観光客のお蔭で大いに潤いましたが、700万人の島に、その数倍の人口が押し寄せると、サービスが追い付かず、地元市民の反発が起こり、それが2014年の「雨傘革命」に繋がった要因の一つだったのです。

宝飾品の「周大福」やドラッグストアの「SASA」などは2014年まで増収増益を続けましたが、2015年以降、減益を余儀なくされました。

今回も企業訪問の合間に、「SASA」にも入りましたが、2014年以前の活気が見受けられず、観光客による「爆買いブーム」が終焉したかと、一同は感じました。日本製が大半だった過去と比べると、韓国製が随分と増えている印象も受けました。

香港政庁の発表によると、2016年の訪港客数は前年比4.5%減少したものの、依然5000万人(5665万人)台をキープし、観光産業は海運、金融などと共に香港経済の大黒柱の一つであることに変わりのないことを裏付けています。

「自由行」で人の往来の架け橋が作られて香港経済も長年潤いを受けてきたのですが、お金の往来の架け橋も作られ、その橋を通るお金が増えていることが明らかになっています。

その橋とは、「上海・香港」「深セン・香港」「直通車」のことです。

統計によると、今月8日まで、直通車経由上海市場には1678億香港ドル、香港市場には4183億香港ドルの資金が流入していることが分かりました。時価総額数十兆香港ドルの市場に4100億程度ではタカが知れていると思われるかもしれませんが、2003年の「自由行」の人の往来も数万人からスタートしたもので、それが50倍、100倍、1000倍までは10年を要しなかったのです。

内陸からの資金はどのセクターに流入しているか、中国株投資家として追跡する必要があると考えます。

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