番付から見る構造転換の現状

「フォーチュン(財富)中国企業トップ500ランキング」に続き、米誌「Fortune Magazine」は20日、「グローバル500(Fortune Global 500)」を発表しました。番付やランキングなどについて日本ではすでに下火になり、選ばれた人もプライバシーの侵害ということで面白くないし、一般の人の関心も薄らいでいます。

しかしランクインされた企業にはその国の経済構造や強い、弱い企業の情報が秘めているので、投資家にとっては貴重な情報の一つでもあります。今年の「グローバル500」の特徴と言えば、売上高は前年比11.5%減の27兆6000億米ドル、純利益は11.3%減の1兆4800億米ドル、売上、純利益ともに下がり、2015年の世界経済の動向をじかに映したと言えることです。

そして「グローバル500」にランクインされた中国の企業数は、昨年の106社よりさらに4社増えて110社に達し、割合にして20%、5社に1社が中国の企業で占めるようになったのです。では、どのような企業がランクインされ、またどのような業種の、GDPに占めるウエイトが高いのか、子細に分析すると経済の構造(仕組み)が浮き彫りになってきました。なぜなら、グローバル500は世界生産の40%、国際貿易の50%、国際技術(サービス)貿易の60%、国際直接投資の90%を占めているからです。

業界の偏り ランクインされた中国系企業の多くは、石油や金融、電力、鉄鋼、自動車、石炭、非鉄金属など従来の重厚長大産業が多く、生産過剰やゾンビ企業も少なくありません。政府はこれらを整理再編し、統廃合していく方向で進めていますが、図体だけ大きいことに昔とあまり変わらないことが気になるところです。
独占による利益の生み出し企業 「グローバル500」の上位5社に中国企業3社がランクイン。その内、電力は1社、石油は2社で、このほか中国系銀行は10行、保険は7社で占められています。特に利益に関して、銀行10行の利益は1816億米ドルで、台湾系企業7社を除く103社の中国系企業の利益の55%を占めており、石油や金融など民間や外資に開放していないいわゆる独占企業が「独占」利益を上げている現実が改めて浮き彫りになっています。専門家は、銀行は高い利益を上げていることは融資を受ける側の企業や個人が高い融資コストを支払っていることを意味し、独占の打破を訴えています。
ハイテク産業が僅少今年日本企業のランクインは昨年同様合計54社ですが、米国と同様、自動車や製薬会社、小売り、ITなどハイテク産業で世界的にも通用する名前の企業がずらりと並べられています。その点、中国の企業13社が今年新規にランクインされましたが、例えば、IT系では、アリババもテンセントの名前もなく、唯一ナスダック上場の京東(JD)が366位にランクインされましたが、今年は昨年に続き大幅な赤字となっています。
不動産は世界一ハイテク企業が少ない代わり、不動産関係がやたら多いことに経済の持続的成長に疑問視する声が後を絶ちません。今年、万科が初めてランクインされたことは民間企業躍進の象徴として取り上げられていますが、しかし精査したところ、不動産専門の会社のほか、華潤や中信、中国糧油など不動産を副業とする会社はなんと17社も数えられます。中には、副業としながらも、決算書で不動産部門が一番利益を上げている企業も少なくありません。不動産依存の体質に変わりがないことを裏付けています。

「中国企業トップ500」は上場企業をランクインしているのと違い、未上場企業も「グローバル500」に取り上げられています。通信機器やスマホも作っている「華為」(HUAWEI)は昨年に続き、今年もランクインされ、昨年の228位から129位まで躍り出ています。民間企業の躍進をなくして構造転換は語れません。華為やレノボなど民間企業の活躍を期待しています。

 

 

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