香港版サーキット・ブレーカー制度

「証券会社から別途メールが届いた。英語と中国語の文面でGOOGLEやYAHOOの翻訳にかけても十分理解できないのでメールを差し上げた次第です。恐縮ですが、ご教示を宜しくお願いします」

先日、こんなメールが当社に届きました。寄せられた文面を確認しましたら、すでに当社HP「中国経済News & topics」8月20日付で取り上げている「香港証券取引所 22日から市場メカニズム導入へ」の内容そのものでした。

中国A株の昨年の乱高下で、過度な値動きを抑制する目的で12月「サーキット・ブレーカー」制度の導入が発表され、今年1月1日から適用されるようになりました。お正月の休みもあって、制度の実施は1月4日からで、多くの関係者が見守る中、初日の後場が始まって間もなく5%の値下げというルールに引っかかって15分間市場の取引が停止し、再開して6分後、今度は7%の値下げという全日取引停止のルールにひっかかって終日の取引を終えたのです。

そして3日後の7日、取引開始後42分で5%ルール、再開後3分を経て今度は7%ルールに引っかかって終日の取引を終了せざるを得ない状況になったのです。

市場の乱高下を防ぎ、冷却期間を設けようとすることが制度の趣旨だったのですが、売りに売りを誘う結果となり、翌8日、同制度の適用停止発表まで追い込まれました。

しかし、香港版「サーキット・ブレーカー」制度の最大の違いは、異常な株価変動の際、10%ルールを設けますが、対処法としては取引停止ではなく、5分間指定された株価の範囲(10%)以内で取引することにし、指定範囲を超える売買(取引)をできないように「冷却期間」を設けるということ、そして指数ではなく、個別銘柄に限定されることです。

同制度の導入について、香港証券取引所マーケット部門の担当者は「市場調整メカニズムは重大な取引トラブルによる極端な価格変動に対応するためのもので、市場参加者は同メカニズムが頻繁に発動されることの心配はない」と解説し、香港証取は過去9年間のデータを基にして統計したところ、同制度に抵触することはなかったと指摘しています。

サーキット・ブレーカー制度は日米など主要市場には、それぞれ採用されています。そうした中でも、「ジェイコム男事件」を未然に防ぎなかったことは記憶に新しいものです。

更にこの時期の制度の導入に、まもなく始まる「深港通」と無関係とはどうしても思えないのが率直な感想です。

深セン市場は創業版など小型株を中心とする市場で、市場参加者も小型株が好きなことで知られ、昨年の市場の高騰でPER1000倍の株まで輩出し関係者を驚かしています。

香港証取の発表によると、2015年末現在、香港上場のH株やレッドチップスなど中国系企業は951社、香港市場時価総額の62.1%、出来高の72.7%を占めるようになっています。このような市場を深セン市場の投資家に開放することで、短期間の株価の変動は容易に考えられます。

「深港通」の対象株に時価総額50億香港ドルの企業を排除しているのも、小型株好きな内陸投資家を想定したのではと推測できます。(「香港セント株」の排除も理由の一つ)

香港版サーキット・ブレーカー制度の導入自体は内陸からの南下資金の「襲来」を迎え撃つための準備ではないかと推測せざるを得ない今日この頃です。

 

 

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