「中国経済はU字でもなく、V字でもない、L字型の回復にある」。本日の経済紙や経済関連ポータルサイトの多くは、新聞「人民日報」の「権威者」へのインタビュー記事を転載しました。「中国経済の大勢を問う」というタイトルの記事は中国経済の現状や問題の対処法など質疑応答と言う形で掲載されています。
かなりの長文ですが、主旨としては、積極的な財政政策と穏健な通貨政策を堅持し、レバレッジ(信用拡大)で経済成長を無理に引っ張っていくこともないしその必要性もない。中国経済はU字型ではありえないし、V字型でもなく、L字型の大勢にある、と中国経済について最新の診断を下しています。
経済成長が鈍化し、低迷が続くと、中央政府による「刺激策」を期待する声が上がり、伸び率を維持するためにも、政府による投資がこれまで繰り返し行われてきました。その結果、実需もないのに、生産ばかり増えて、これが現在の生産過剰を作ってしまった一因でもあったのです。今月6日、国務院直属の国有資産管理委員会は106社の中央直轄の国有企業に対して行った監査の結果を発表しました。調査対象の企業の内、今年3月末までに82社が中期、短期の債券を発行し、その内84億のデフォルトが生じていることが明らかになっています。
国有企業の債務不履行は今年に入ってから頻発していますが、民間企業の一部にもデフォルトの危機に直面しています。3月17日に5億元の債務償還期限を迎え、一時デフォルトになり、その後2回に分けて資金を調達して返済を完了した南京に本社のある雨潤食品集団は、6日傘下の「南京雨潤食品」に5月13日に償還期を迎える10億元の中期手形は償還に不確実性があると公告で発表しました。
債務の償還危機について、同社はハイエンド消費市場の低迷と生産コスト増のほか、2015年本決算で15億8000万元の赤字を出したことも償還を更に困難にしたと分析しています。
こうした企業の債務危機について、前出「権威者」は高いレバレッジには高いリスクを伴う。これをうまくコントロールできなければ、システム的な金融危機を引き起こしてしまい、経済のマイナス成長に陥り、国民の貯蓄がなくなってしまう危険性もある。
こうしてみると、信用拡大で無理に経済成長を維持する必要はないことが分かるだろう。株式市場、外為市場、不動産市場の政策もどうあるべきかは自然に見えてくる。ただ単に伸び率を維持するための手段にしてはならない、と市場を中心とした経済運営をすべきだと言う考え方を示しました。
同権威者はこれまでもメディアのインタビューと言う形で経済について解読していますが、市場に関する考え方や言葉の使い方などから見ても、現内閣のシンクタンクであることが推測されます。
中国経済は底をついていますが、これからの長い期間L字型のまま続くだろうと言う認識が伝わってきます。そうした認識の下、各種経済政策が取られるだろうと考えられます。