「手の内をすべて明かすわけには行かない」

 投機筋に市場心理を左右させてはならない その5      

G20財務相・中央銀行総裁会議が今日と明日の二日間上海で開かれます。会議では、世界経済やインフラ投資、国際金融の監督管理、各国の税制協力及び環境保護に関する融資など八つのデーマについて議論が行われます。議長国の中国で開かれるとあって、人民元為替や中国経済についての中央銀総裁の基調講演が注目されます。

そのようなタイミングでの中央銀行総裁のメディア取材です。中国人民銀行周小川総裁の話の続きです。

Q 各国の経済政策には客観的に波及効果があるが、世界的協調メカニズムはもっと働かせないものか。

A 残念ながら世界的にはこのようなメカニズムはまだ樹立されていない。SDRこそこのようなメカニズムを樹立するための努力だ。現在このような議論は一部にあって協調体制を以て各国で分担し、(為替の)安定を図ろうとするものだ。非常にいい議論だが、更に長年の努力を必要とされるだろう

Q マーケットでは、元為替レートの規則は不透明で、中央銀行はどうしてこうしたり、ああしたりしているのかを当てなければいけない。マーケットとのコミュニケーションはうまく取れないものか。

A まず、中央銀行として投資家及びマーケットとのコミュニケーションを図る明確で強い願望を持っていることを明確にしたい。その為にこれまでも効果のある実践もしてきた。同時にうまくコミュニケーションを取ることはそう簡単なことでもないことを強調したい。

現在、世界の金融市場には不確実な要素が数多く含まれ、意見の食い違いや議論が多いのも事実だ。このような時に預言者や権威が現れ、その不確実性を確実性に変更させることをみんなが期待するものだ。しかしその不確実性はマーケットに客観的に存在するもので、口頭だけの安定剤を以てこれを取り払うことはできない。

中央銀行は神様ではなくまたマジシャンでもない。不確実性をすべて取り払うことはできない。したがって我々も「申し訳ない、現在新しいデータを待っている状況だ」と言うしかない時もある。

フォワード・ガイダンスについては、いくつか問題も研究しなければならない。まず、マーケット指針だが、中央銀行の人材と情報はマーケットより優れているかどうか、ガイダンスの理論と予測モデルはマーケットより優れているかどうか、次に、フォワード・ガイダンスと伝統的通貨政策の関係。金利と公開市場オペなどの選択肢がすべて失効の時、口頭しか頼りになるものはなくなる。三つ目には、国際経験から見ても様々な議論は避けられないこと。中央銀行内部でも見方が分かれる時だってある。そのような時のフォワード・ガイダンスは市場の手助けにはならない、市場の憂慮を減らすことができない。

注目すべきは、過去数年、人民元は元高で推移し、外貨準備高も蓄積してきた。しかしこれは無限に拡大するものではない。どこかで頂点に達しターニングポイントを迎えるだろう。

そのターニングポイントを迎えるまでは過剰な元高や迎えた後は行き過ぎた元安もあり得る。その後為替はまた元高になったりすることも。ファンダメンタルズでは、元高を示すものだ。トレンドとしては揺れる(変動の)中でも段階的に安定に向かうと考えられる。

中国の外為市場は十分に競争できる完全な市場ではない。それぞれの市場主体(投資側)に対して、コミュニケーションの戦略は違うものだ。一般投資家に対して知識とシステムのコミュニケーション、輸出入業者に対しては予想のガイダンスを与えるが、一方投機筋に対して博打の相手なので、中央銀行はオペの詳細を教えるわけには行かない。碁の対極と同じように、次の一手――手の内をすべて明かすわけには行かないだろう。

 

 

徐さんの中国株の最新記事