「玖龍紙業」を追跡しているわけは

前々回のコラムで、「晨鳴紙業」に続く増収増益企業の一つに「玖龍紙業」(2689)があることを取り上げました。

その玖龍紙業は昨日(23日)、1231日までの中間期決算を発表しました。

発表によると、売上高は昨年比17.3%増の1912500万元で、純利益は為替差損などを差し引くと51.4%増の191500万元になると言います

同社は123日、中間期決算の業績予告として、45%以上増益見込みであることを発表しました。前日の株価は7.82HKDでしたが、発表後、同社株が買われて昨日の終値は9.73HKDでしたので、一ヶ月で約20%上昇したことになります。さらに遡って2016815日の終値は6.16HKDでしたので、半年で同社株は36%上昇したのです。

「玖龍紙業」は1985年創業された民間企業で、中国の高度成長に伴い段ボールに対する需要が急増し、創業者張茵は1996年アメリカで古紙回収を主業務の玖龍紙業(米国)を設立し、2002年に江蘇省で95万トンという生産能力のラインを作りシェアを順次拡大し、2005年、当時国内最大の晨鳴紙業を抑えて国内最大、アジア2番目の製紙メーカーまで成長したのです。

2006年香港に上場し、調達した資金で生産を拡大した矢先に、金融危機が発生し、同社も事業再編とリストラを余儀なくされました。

2008年後半、中国政府は零細製紙会社の統廃合を進め、業界トップの同社に市場拡大の絶好のチャンスを作ってくれました。政府の刺激策と段ボールの需要増、2009年上半期、32300万元だった同社利益は下半期になると、4倍以上の133800万元に上り、同年、創業者張董事長も女性企業家番付の一位に躍進しました。 

その後、同社業績も株価も中国経済リセッションの懸念のもと、低迷が続きましたが、転機は2016年の後半に表れたのです。政府の供給者側改革が功を奏し、同社主力で、売上高の9割を占める段ボールの価格が2016年後半から値上がりし、年末までトン当たり4738元まで、9月から実に50%以上の値上がりとなっています。統計によると、国内製紙業界の売上高は前年比6.5%の14687億元で、その他メーカーも含めて一斉に製品の値上げを宣言しました。 

200910月「投資考察団」で同社重慶工場を見学しました。揚子江に直結するふ頭付きの大きな工場がとても印象的でした。それ以来、常に同社の動向を追跡していますが、何しろ同社製品の段ボールはすべての産業に使われる商品で、商品価格、出荷量はある意味製造業の好不況を見るバロメーターの役割もあると言えるからです。

経済を見るには、GDPの数字だけではなく、「発電量と貨物輸送量、融資残高」というマクロの「克強指数」がありますが、株式市場を見る立場として同社業績をチェックするのも有効な方法の一つだと考えます。

 

 

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