セント株 空洞化の後遺症

香港市場のセント株について、HKEXの李小加総裁のブログの内容を実例を挙げながら4回に分けてご紹介しました。李総裁はわざわざこのことを取り上げているのには、一般投資家の強い不満がネット上で炎上していたからです。

 

というのもセント株の存在を知りながらも、これを取り締まろうという動きはHKEXも香港証券監視機関も見せていないのが理由に挙げられます。

 

香港では、2002年に、HKEXが上場廃止について一般(投資家)から広く意見を徴集し、「30日間連続で時価総額が3000万元以下、または平均株価が0.5HKDの場合、上場廃止に当たる」とした案も出ましたが、セント株の暴落に繋がり、同案も採択されないまま今日に至っています。

 

HKEXの現行の制度は2003年4月1日から施行された二重登録制で、条件さえ満たせばどの企業でも上場は可能ですが、しかし、情報公開をきちんとしなければ罰則を科せられるなどディスクロージャーについて厳しい条件を設けています。しかし、情報の真偽については保証するものではないので、投資家の判断に任せていることにセント株を温存させたとの指摘もあります。

 

また内陸の市場では、大株主が自社株を売却の際、売却の15日前に売却計画の公表を義務付けているほか、大株主は3ヶ月以内公開市場での売却総数について発行済み株数の1%を超えてはならないとすることを規則で決めていますが、香港市場では、持ち株5%以上の大株主及び上場企業の役員が売却後3営業日でHKEX経由告知すればいいことになり、売却数についての制限も設けていないのが現状で、大株主にとって都合のいい市場だと指摘されています。

 

セント株がここに来てクローズアップされたのは、もともと、機関投資家やファンドが時価総額や流通株の制限などで目も向かない株ですが、深セン、香港ストックコネクトの開通が迫り、GEM(創業版)市場の時価総額の小さい株が好きな内陸投資家にまもなく開放するからです。内陸の投資家はこれまでセント株に触れるチャンスはあまりなかったので、注意喚起も含めて再び取り上げられています。

 

とは言っても、私たち海外投資家にとっても決して対岸の火事ではありません。減資や分割、割当増資などを繰り返す日本でも名前の知られる銘柄もあります。株価が五分の一まで下落し、安いからだと言って安易にナンピンをかけると、「財技」(ファイナンステクノロジー)でいくらでもまた下がりますし、下がったところで、増資を提案してくることも十分考えられます。上場規則に許される行為なので投資家は自己防衛に徹する以外はありません。

 

セント株も時には、20%や30%も瞬時に急騰する場合もあり、仕手株好きな投資家には向くかもしれませんが、心臓の強くない投資家は遠いところで楽しんでもらいたいと思います。

 

しかし、そもそもなぜセント株が自由自在に泳げるのか、これを深く掘り下げて論じる文章やコラムをあまり見かけないのが残念ですが、元はと言えば、これらセント株の会社もかつては実業を伴った輝かしい過去はありましたが、中国返還以降、実業は北上し、香港経済の「空洞化」=上場会社もペーパーカンパニーに脱落したことが株式市場ではセント株として現れたと考えて妥当なのではないでしょうか。

 

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次回の中国勉強会は10月6日(木)銀座の天厨菜館で開催します。

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