富裕層はどこでもお得意先に

「せっかく日本に行ったので銀行口座を作りたかったが、断られた」と来日する中国人の不満の一つに「銀行口座が作れない」ことでした。しかしこれは中国人に限らず、外国人の観光客が短期間の訪日で銀行の窓口に行ってパスポートなど身分証明書を提示しても口座を作ってくれないのが今の日本の金融機関です。

 

前出「不満」の中国人は知らないかもしれませんが、日本人で中国の銀行窓口に行ってもなかなか作ってくれないのが中国の金融機関もまた同じです。

 

テロや反社会勢力の資金源を断ち切るのが表向きの理由として挙げられますが、銀行にとって意思疎通でトラブルになりやすい、税務当局にとって税金捕捉の対象が把握できないのが本音かもしれません。

商売である以上は誰でも考えることです。

 

その点、香港は自由なところがあり、現地非居住者でも身分証明書と海外の住所証明さえ提示すれば口座を開設してくれますが、しかし、2012年反マネーロンダリング(資金洗浄)法の順守が不適切だったとして、香港最大の銀行、英系HSBCが米司法省から罰金19億ドルの処分を受けて以来、口座希望者本人との意思疎通ができない場合、口座開設ができなくなったのです。

 

HSBCは管理体制の見直しに関する5ヶ年計画を米司法省に提出したというので、まもなく5年目を迎える節目の今、銀行の審査が特に厳しいと言われます。

 

しかし富裕層をお得意先として迎えたい気持ちには洋の東西を問わず共通するところがあります。

 

香港証券先物取引監督管理委員会は先週「口座開設に関する顧客身分照会に関する仲立ち人への通達」を発表し、内陸の投資家が香港で証券口座開設の際、電子認証による身分照会を認めることになったと報じられています。

 

これにより、内陸の投資家はこれまで面前署名を求められたプロセスを略して内陸と香港当局に認められた電子認証で口座を開設することに道が開けたのです。

 

内陸在住の投資家が香港市場に投資するのに、2014年11月に開通した上海、香港ストックコネクトルートのほか深セン、香港ストックコネクトも間もなく開通されますが、投資適格者として、口座残高50万元以上などの制限が設けられ、投資した資金は元のルートで戻さなければならないなどという不便さが残ります。ネット経由で直接香港の証券会社で口座が作れるようになると、そのような不便さも解消されます。

 

一方、中国最大のデビットカードの中国銀聯(China Union Pay)は先週金曜日の夜、銀聯カードを使って香港で貯蓄性のある投資用保険の保険料支払いについて上限(一回の決済につき5000米ドル)を設けたと発表しました。

 

中国から資金を海外に移すのには持ち出し上限など様々な制限がありますが、デビットカードの銀聯を使うと合法的に海外で保険料の支払いを含めて消費することができます。

 

銀聯の措置について、国内資本の流出を防ぐことが目的だと言うご指摘も当然ありますが、香港の保険会社に終身保険など積み立てや貯蓄性のある保険に大勢の見込み顧客がみすみす流れていくことに国内保険業界からの圧力もあったのではないかと憶測されます。

 

同発表を受けて、香港保険業大手のAIA(1299)の株は31日、5%以上暴落しました。内陸の多くの富裕層が顧客になったのに、そのルートを閉ざされることになったからです。

 

前出香港証券委の電子認証承認と銀聯の決済上限額の設定は得意様――富裕層を確保したいことに共通しています。

 

電子認証の副産物として、海外投資家に対しても電子認証が適用される日が訪れるのではないかと密かに期待しています。適用される日があればここで告知しますので、どうぞ引き続き『徐さんの中国株」にご注目ください。

 

 

<お知らせ>

 

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