深セン・香港直通車はどこへ行った?

工業的豊作貧乏に直面する中国だが、その過剰の生産能力の一部を海外にでも輸出しようと打ち上げられたのはAIIBや一帯一路などという政策でした。一方、国内工業部門の技術更新やイノベーションと言った所謂構造転換も進まないままでは、付加価値の低い製造工程の加工賃に終始してしまいます。構造転換もイノベーションも時間や資金が必要となります。株式市場の活性化で企業のイノベーションや構造転換のための時間稼ぎもまた資金稼ぎもできることで、昨年後半から改革の措置を次から次へと発表し、A株市場に大量の資金を呼び込んできたのです。 

しかし目論みも貪欲の投資家により一年も続くことなくこの夏に頓挫し、世界市場にも多大な影響を与えることになりましたが、市場はこのまま元気を取り戻さないと、構造転換も失敗に終わってしまうという危機感からでしょうか、9月から以降、指導部は異例とも言える株式市場の健全な成長についての発言が相次いでいます。その発言の要旨を拾ってみます。 

2015年9月9日、李克強氏は夏季ダボス会議(大連)にて、「6、7月の株式市場の異常な変動についてわれわれ安定措置を取った。これは金融安定化のもので市場に取って代わるものではない」と言及。 

9月10日、同じくダボス会議で、市場化、法制化の方向で金融改革を進めると強調。9月21日、来訪中のイギリスのオズボーン(George Osborne)財務大臣との会見で、李克強氏は「中国の金融改革の方向性に変わりはなく、今後管理監督の効果を高めることだ」と述べています。 

9月22日、習近平氏はシアトルでの訪米歓迎会でWSJ紙の取材に続き再度「中国の株式市場は自律回復と自律調整の段階に入った」と挨拶。 

10月18日、訪英を前にしてロイター通信のインタビューを受けた習近平氏は「内外の金融市場の変化に対応して我々は準備率や金利の引下げ、人民元為替レートの市場化システムの完備など一連の措置を取った。お蔭で市場のリスクをかなり抑えることができた。中国は市場化、法制化に向けて金融改革を推進し、公開で透明性のある、長期安定した健全な資本市場を育てていきたいと思う」と語りました。 

同じく10月18日、李克強氏は金融企業会合に出席し、「通貨というプールには水(お金)が一杯溜まっているが、しかし実体経済への流入にはメカニズム的な障害がある。金融コントロールとサービスの有効性を高め、改革を以てこれを解決しなければならない」と訴えました。 

昨年11月、上海証券取引所と香港証券取引所が直接取引を行うストック・コネクト(直通車)を開始し、双方向の取引で市場の活性化が期待され、上海に続く深センと香港市場の「直通車」も年内開通をと期待されましたが、予期せぬ上海市場の暴落で開通時期などすっかり雲隠れになっています。 

突然の発表など無きにしも非ずですが、今年の株式市場はどれだけ急変したのか指導部の異例の言及を見てもお分かりいただけます。 

香港市場では、昨日(22日)までに金融管理局が21回に渡って1274億香港㌦分の市場介入を繰り返し、市中銀行の決済口座残高は4031億香港㌦と史上最高を記録しています。これらの資金は今のところ株式市場に流入した形跡はまだ見られませんが、しかしその動向から目が離せられない状況が続いています。

 

 

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