物言う株主

多角化経営で収益源を確保し、難局を乗り切ろうとする企業が増えています。ケーシングの「神冠控股」や農産物貿易の「亨泰」も、本業とはかけ離れた業種に買収などで参入しています。

 

本業不振の原因を消費の低迷など国内の不景気(のせい)にしていますが、参入先の異業種は不況の影響はないものか疑問に思うところです。

 

そうした異業種への参入を臨時株主総会で反対多数で経営陣の決定を覆す事例が出ています。深センA株上場の格力電器(000651)です。

 

格力電器は珠海にあるエアコン専門の家電メーカーで、董事長の董明珠はA株投資家で知らない人がいないくらい有名な経営者で、剛腕で「鉄の女」とも言われます。

 

同社は今年エコカーの珠海銀隆新能源有限公司の買収計画を発表し、先週(28日)臨時株主総会を開き、買収案と買収のための増資案の投票を行いました。

その結果、買収案は辛うじて採択されましたが、増資案は反対多数で否決されました。

経営陣は増資で資金を調達して買収資金に充てることを目論んでいましたが、反対多数(否決)を予測もせず、本日取引停止にして対策を打ち立てているところです。

 

増資案が否決された理由には、買収対象の珠海銀隆の評価額は約50億元に対して買収額の130億元は2.6倍のプレミアムが付くことになること、格力電器には売掛金も含めて1000億元以上の現金を抱えているのに更に増資を行い、個人株主の持ち株(比率)は稀釈されること、などです。

 

同社の臨時株主総会に100人以上の個人株主も出席しましたが、増資案への不満を表すため、董董事長入場の際、誰一人拍手を送らなかったことに「私が株主総会に入場の際、拍手がなかったのは今回が初めてだ。当社は2年間で180億元も配当している。何が不満だ」と出席株主への不満を露わにし、「5年間で配当を一切しなくても私をどうこうすることができるものか」と挑発めいたことを口にし、経営陣の苦労を述べ、一朝一夕の株価の値動きを気にせず、100年企業を目指す同社の経営に理解を求めたのです。

 

中国の家電メーカーで、「春爛」や「オークス」、「グリーンクール」、「美的集団」など20数年も前から自動車メーカーを目指す動きが相次ぎましたが、悉く失敗で終わりました。

同社もかつて携帯電話業界に参入し、シャオミー(小米)を打ち負かすと宣言しましたが、不発で終わった経験をしています。

 

株主として、専門メーカーとして業界一を死守してほしいという気持ちが経営陣に伝えていますが、経営陣の100年の夢――企業目標よりも株価を維持してほしいという経営陣対株主の矛盾が投票結果に反映されています。

 

同社に限らず、これまで企業の株主総会に個人株主の出席は疎らでしたが、企業経営を監視するという意識が高まり、モノを言う株主が今後も増えてくることでしょう。

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