監査法人の責任は?

香港の市場失当行為審裁署が空売り機構の一つ、「Citron Research」の代表者Andrew Left氏に対して、業界参入5年間禁止の処罰を出している中、もう一件、空売り機構対企業との戦いが展開されています。

Emerson Analytics対華瀚健康(0587)です。そして今回は華瀚健康の監査法人も巻き込まれています。

 

華瀚健康が狙われていることを先日の『徐さんの中国株』で取り上げた後、当社発信「中国企業情報」ご購読の複数の方から更にリクエストがあり、関心の高さを伺えます。

 

しかし、同社についてはもともと当社「中国企業情報」の研究対象になっていないので、そのために多くの時間を取らなかったのですが、リクエストを受けてから早速情報を集めてみました。

 

同社を狙ったのは米系空売り機構のEmerson Analyticsで、これまで神冠控股(0829)、桑徳国際(0967)、中国光繊(3777)に対しても同様の粉飾疑惑でネガティブレポートを発表しています。

しかし、華瀚健康に対してこれまでにない「徹底振り」と「粘り強さ」があると言われます。

 

時系列に見ても、8月11日一回目のレポートが発表され、取引時間内に同社株価は30%以上も暴落し、取引停止に追い込まれたのです。

同社は反論の公告を用意し18日取引再開するとともに、市場からの買戻しを実施して株価が急回復しました。

しかしその約10日後の29日、「上場廃止にすべきだ」という2回目のレポートが、さらに9月8日に3回目のレポートが相次ぎ発表されます。

 

2回目、3回目のネガティブレポートが公開されても同社は取引停止を申請しなかったのですが、しかし、9月27日になって同社は再度取引停止を選択したのです。その理由について、同社は6月30日までの2015年度本決算が予定通り発表できないとしています。

 

当初発表できない理由について特に触れていなかったのですが、3日後の公告で、監査法人のErnst & Youngからは、これまでにない資料の提出を同社に求めて来ていることを明らかにしました。

 

市場では、Emerson Analyticsに指摘された事由の一つ、同社売上高の大部分を占める子会社は社員が代理人名義で保有されていることを遡って5年間、一度も披露されたことがなく、これは規則違反ではないかとのことは、企業内部か監査法人しかわからないような事項で、どうしてEmerson Analyticsに漏れたのか、また2011年から以降、毎年の監査報告書に一度も保留意見のないErnst & Youngは、発表期限のギリギリのタイミングで、なぜ同社に対して補足資料の提出と新たな監査プロセスを求めて来ているのか、などについて疑問を投げかけています。

 

Emerson Analyticsに指摘された諸疑惑も、また監査法人になぜこのタイミングで補足資料の提出を求められているのか、解明はこれからになりますが、今月19日、同社は上記疑惑の解明に当る社外取締役からなる独立調査委員会の設置を発表しました。

 

Emerson Analyticsは今回のレポートの冒頭、同社株を空売りしていることを明言しています。

華瀚健康を巡っては、空売り機構の倫理観、企業のガバナンスと監査法人の責任が共に問われる事例になるかもしれません。

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