誰の責任?

「ブラック・スワン」という言葉があります。従来すべての白鳥は白色だと信じられていたのだが、豪州では黒い白鳥が発見され、従来の常識が大きく崩れることになったことから、マーケットに置いて事前にほとんど予想が出来ず、起きた時の衝撃が激しい事象のことを例える時に使われる言葉です。

中国株式市場は春節の長い連休を終え、本日から「申年」の取引が始まりました。大方の予想通り、寄付きからマイナスのスタート。本土市場に先駆けて今月11日から取引が始まった香港市場もマイナスでスタートし、ハンセン指数は2日間で5%以上下がっています。

昨年の夏ごろ、中国市場独特の理由により株式市場は大暴落となりました。10月あたりから一旦反騰は見られましたが、新年に再度の暴落。それから以降、相次ぐブラック・スワンの出現で一国の影響で説明がつかない暴落の連鎖が世界中を駆け巡っていました。そのいくつかを拾ってみようと思います。

地政学的リスク中東情勢が混沌のまま、新年に突入したら、1月6日、北朝鮮はいきなり核実験をしたと発表し、続いて2月7日に衛星と称してミサイルを発射。ビリビリとした市場に大きな衝撃を与えていました。

元安とサーキットブレーカー制度の発動昨年8月11日、中国は人民元の切下げを発表し、市場では元安の始まりと認識し、年末から年初にかけてヘッジファンドによる元売りが加速しました。そのような時期に、市場の秩序なし暴落を食い止めようとするサーキットブレーカー制度が発動され、適用わずか4日後の7日に同制度が廃止に追い込まれるという株式史上最も短命の制度となったのです。

欧州銀行危機ドイツ銀行は先週68億ユーロの巨額の赤字だという決算を発表し、2009年7月以来の安値を記録しました。市場ではリーマンショックの再来かと疑心暗鬼が起こり、ヨーロッパの銀行も連れ安となっています。

OPECとロシア石油輸出機構のOPECと産油国のロシアでは、減産について合意に至らず、原油価格は先週一旦反騰し、一日の上げ幅として7年振りの最大を記録しましたが、一バレルあたり30米ドルまで回復できず、消費者と輸入国にとってはプラスですが、デフレに喘ぐ国や地域にとっては短期的影響は大きいものと見られます。

イエレン証言米FRBイエレン議長が10日議会で証言し、次期利上げについて否定はしなかったものの、雇用統計や企業在庫などリセッションのリスクが常に存在していることを改めて示したことにより、アメリカ株が暴落し、金など安全資産が高騰しています。

マイナス金利欧州中央銀行とスウェーデン国立銀行(Riks bank)に続き、日銀も1月29日マイナス金利の実施を発表しました。マイナス金利の主旨はデフレ対策ですが、市場では、世界経済の先行きが一層不透明になり、中央銀行は次に打つ手があるのかという疑問が投げかけられています。

香港の騒乱春節――旧正月の初日の夜、突如として香港の繁華街の一角、旺角(モンコック)に若者による騒乱が起きたというニュースが飛び込んできました。発砲、逮捕者などの記事が相次ぐ中、12日の夜コンテナふ頭隣接の駐車場に放火と思われる火事が起きていました。世界市場が下落している中、11日に始まった香港市場には、このような事件はまさに火に油のようなことで、ハンセン指数は4年と6か月振り、ハンセン国有企業指数は6年振りの安値を記録しています。

世界的株安が続いています。それぞれの国が取られている政策は経済のボーダレス化の中、他国への影響も経済規模に比例して大きいものと考えられます。

香港市場に限って見ますと、市場の平均PERは1998年のアジアの金融危機当時とほぼ同レベルまで落ちています。投資家間では、今の株価はIPO前のレベルだと見る向きもあり、市場参入のタイミングを見計らっています。「ブラック・スワン」は世界を一巡しています。そうした中で堅実な企業を今月20日から「中国企業情報」でお届けしたいと考えます。

 

 

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