賢人に学ぶ

香港の大富豪、李嘉誠が率いる「長江実業地産」(1113)は26日、上海浦東の世紀大道に隣接し、今年完成する予定の「上海世紀匯プラザ」を傘下に持つMapleleaf Developmentsの持ち株(50%)を譲渡することで買い手側と契約したと発表しました。

 

譲渡金額は200億人民元(凡そ230億HKD)で、物件単価は平米あたり75000元だと言います。

敷地面積51000㎡の土地を2005年に12000元/㎡で取得し、10年がかりでやっと完成した商用物件で、この時期の手放しに、「中国投資を引き上げている」とまたもや議論を巻き起こしています。

 

と言うのも、長江実業地産は2011年から以降、内陸で新規に土地を取得したことがなく、むしろ、内陸の資産を譲渡し、特に2013年から以降内陸を始め香港の資産も含めて売却を加速させているからです。

直近の3年間で、内陸の資産だけで1000億元以上も譲渡している反面、ヨーロッパへの投資を増やしていますので、中国経済の先行きへの「懸念」があるのではと、憶測が起きています。

 

中国の対外開放と経済改革が始まる1980年代初頭から中国投資を始めた同グループの動向に、現地メディアが敏感になるのも可笑しな話ではありません。

 

同グループが北京の第三環状線に立地するオフィスビルを売却する際、「李嘉誠を逃がすな」と、中国経済の成長とともに、多額な利益を上げた氏が、構造転換という時期に、簡単に引き揚げさせるなとポピュリズム的コラムさえ登場しています。

 

今回の上海物件の持ち分譲渡について、現地メディアはその理由について概ね次のように分析しています。1. 中国不動産はこれから不況に入り、ピーク時の引上げは正当なものだ。2. 中国の人件費はかなり高騰し、人口ボーナスはほぼ終焉した。3. 中国企業による海外買収もノーマル化になり、氏の撤退は一歩先に進んだだけだ。4. 中国経済も高度成長期を過ぎ、ニューノーマルな状態で、成金的チャンスは少なくなった。5. 欧州の資産は安い時期にあり、リスクヘッジでも有効な選択だ。6. 氏の後継者に氏より政府との人脈を持っていない。7. 資産へのセーフティネットがない。8. 金持ちへの嫉妬がエスカレートする香港から逃避する。9. 内陸企業家の成長で、後継者には太刀打ちできる力が育っていない。

以上のように、投資と言う観点で氏の動向を見る向きが増えていることがわかります。

「中国撤退論」について、氏は中国に投資して何十年も経つが、土地転がしなど一度もないことを上げて「中国は大きな国で、毎年のGDP伸び率は6.5%もある。長期的にも国民に豊かな暮らしをもたらしてくれる力を持っているので、なぜ撤退する必要があるのか」と実業(不動産)に投資し、利益を上げての利益確定だと反論しています。

 

中国投資に関して、中国郵貯銀行が先月香港市場に上場の際、同グループは108億HKDで発行済み株価の11.62%を取得し、機関投資家になっていることや先月2012年以来、4年振りに香港で土地を取得したことも紹介されています。

 

グルーバル的視野で資産配置や投資を考え、またこれ実行していることが一般投資家としても学ぶべきことではないかと考えます。

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