金融改革――「放った矢は戻ってこない」

重大な金融政策の発表は週末に行われることが慣例になっています。先週末に発表されたのは、金利と準備率の同時引下げでした。 

金融機関の貸出と預金の金利を0.25%それぞれ引下げ、例えば、1年もの貸出金利はこれまでの4.6%から4.35%に、1年もの預金金利はこれまでの1.75%から1.5%へと10月24日から引き下げることになりました。そして、銀行の預金準備率は0.5%引下げ、これまでの17.5%から17%へと今年5度目の準備率引下げとなったのです。 

一連の金融政策の発表は、実体経済に流動性を増やしたい金融支援とともに、来月に予定されるIMF(国際通貨基金)のSDR(特別引出権)に人民元を盛込むかどうかの議論に金融自由化という条件に一歩でも近づいていることをアピールするという狙いもあると見られます。 

金利と準備率の発表と同時に、これまで中央銀行が指定していた金利の上限も撤廃し、各金融機関の自由裁量に任せることも同時に発表されました。 

先週の『徐さんの中国株』で「深セン・香港直通車はどこへ行った」と株式市場の暴騰暴落で予定していた金融改革の歩みが乱されてしまったと触れていますが、乱されたのは深セン・香港直通車だけではありません。今年の金融改革の目玉の一つでもあるQDII2もその内の一つです。 

QDIIは国内適格機関投資家のことで、これまで海外の株式や債券などに投資できるのは機関投資家に限定されましたが、個人投資家にも開放しようと、3月の全人代で李克強首相が年内を目途にQDII2を実現したいと表明されたのです。 

中国の家計の貯蓄残高は、GDPに匹敵するくらいの54兆元に上ります。銀行の1年もの預金金利は、1年前までは、銀行の自由裁量も含めて3%ほどありましたが、今回も含めて6回の利下げで金利が半分に、そして10年もの国債の入札金利(利回り)は今月2.99%と2008年12月以来3%を割切り、民間金融の座標でもあるアリババ傘下の天弘基金のYue Pay(余額宝)の利回りも2013年6月のスタート以来、初めて3%を下回る低水準であることが明らかになりました。 

21日の国務院常務会議で、上海自由貿易試験区での金融改革を加速するよう再度決議されました。国内金融商品の利回りが低下されている今、海外にその投資先が物色されるだろうと見られます。 

国民の海外投資は自由化になっていないため、投資先は現状かなり限られています。QDII2が実行されましたら、日本での「爆買い」のように、株式や債券、保険、不動産、実業の投資など幅広い分野で盛んに行われるだろうと思われます。 

中国の投資家にとって身近にあってこれまで投資できなかった所謂「中国概念株」が真っ先に買われるのではないかと専門家は指摘します。 

人民元の国際化は宿願で、SDR加入はその入り口であるとも言われます。現在進めている金融改革について「放った矢は戻ってこない」(中央銀調査統計局長)と指導部の決意を代言しています。深セン・香港ストックコネクトとQDII2はいずれも国際化のための具体策です。株式市場にとっても追い風となることは間違いないことで、その実施時期をしっかり見守りたいと考えます。 

 

 

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