A株市場の魅力

商用不動産最大手の万達集団が香港市場から撤退し、H株での上場廃止(公開買い付けで私有化)を公告したことを「徐さんの中国株」でも数回触れています。海外市場での上場を廃止してA株に回帰する現象はここ2,3年急増し、アメリカ市場だけで、昨年は33社も私有化するオファーが出されたということです。

A株への回帰には、A株市場に他所の市場にはない「魅力」があるからだと言われます。動画配信サービスの「暴風科技」(300431)は2011年、主幹事証券会社まで選定し、翌年ナスダックで上場すると発表しましたが、世界の経済情勢が変わったことを理由に、ナスダックでの上場を諦め、2015年3月A株(深セン創業版)に上場を果たしました。ちょうどA株が大相場を迎える時期で、上場後、55日連続もストップ高を演出し、IPO価格、7.14元の株価が2ヶ月弱で、最高で327元まで買われ、A株回帰の伝説として今も語られています。

また同じく動画配信サービスで、ニューヨーク上場の「優酷(YOKU)の時価総額は人民元で凡そ350億元に対して創業版上場の「楽視網」(300104)の時価総額は1000億元まで買われ、その差は3倍近くなっています。

今月15日、ウイルスチェックソフト開発の「奇虎360」がニューヨーク市場での上場を廃止したことを発表しました。同社創業者の周会長は、VCやエンジェル投資家としても名を知られる人物で、米での上場廃止は国内でも話題となっています。

相次ぐA株への回帰で、証券監督管理委員会は、鞍替え上場を認めず、新規IPOを同じく審査が必要だと最近公表しました。前出万達集団のほか、H株上場のTCL(2618)や匹克体育 (1968)なども私有化計画を発表し、さらに、銀行の徽商銀行、ハルビン銀行、重慶銀行、盛京銀行、錦州銀行など5行もA・H同時上場の計画を明らかにしています。

中国国内において投資できる金融商品が少ない分、上場会社はそれだけ「希少価値」もあって、海外市場よりも高く評価されている事実があります。現に「万達集団」の王会長も、「奇虎360」の周会長も自社株の時価総額の評価は低いと口をそろえています

。一方、A株への回帰もあれば、H株での上場を狙っている会社もあります。現に、平安証券や中国郵貯銀行(上場した場合、今年最大のIPOに)、中信建設証券、招商証券、華潤医薬など「優良」とされる企業が香港上場の計画を発表しました。アリババグループの「アリ金融サービス」も香港での上場計画があると噂されています。また当社視察団で訪問したH株上場の石薬集団などA株への回帰を全く考えてない会社も多くあります。

香港市場は内陸と比べて、再融資や増資、減資などの審査は不要で、役員会や株主総会で決めることができるなど大株主や経営者にとって好都合の連続で香港での上場メリットが大きい反面、機関投資家が六割以上も占めていることから、企業を見る目が厳しく、株価も安く抑えられる傾向が見られます。これも同じ会社がAH同時上場しているにもかかわらず、株価に開きがあることの大きな原因でもあります。特に深セン創業版に関して、PERは平均70倍以上も買われる「人気」ぶりで、上場企業にとって魅力があっても、投資家にとっては冷静に立ち向かう必要があると考えます。

 

 

徐さんの中国株の最新記事