「中国企業家」誌は今月8日、「2020年度最も影響力のある中国人企業リーダー」を発表しました。18回目を迎える同ランキングの上位10位の顔ぶれには、雷軍(シャオミ創業者)、張勇(アリババCEO)、王興(美団創業者)、楊元慶(レノボCEO)、張一鳴(抖音・TikTok創業者)、黄崢(拼多多・PDD創業者)、李彦宏(百度創業者)などが並べられています。雷軍は昨年に続き、今年も1位の座に付き、影響力の一端を垣間見ることができるのではと考えます。雷軍はシャオミの創業者であると同時に、金山軟件(キングソフト)のCEOも兼任しています。
2019年3月11日のコラム、「ゲームがなくても金の山」で金山軟件(3888)を取り上げています。株価は2年前同社訪問時(2018年12月)の11HKD台から現在40HKD台前半まで4倍近く上昇しています。ご参照ください。
ゲームがなくても金の山
キングソフトの中国語社名は「金山軟件」と言います。直訳すると、「金の山のソフト」になります。昨年12月、京華投資視察団として北京で同社を訪問し、訪問の様子をその後このコラムで取り上げました。訪問時11.3HKDだった同社株価は年明けたら最高で18.3HKDまで急騰し、3カ月未満で実に約60%上昇したことになります。
同社は1988年に設立されたソフト開発の会社で上場は2007年、上場企業の中では「古株」の会社になります。「シャオミ」(1810)や美団点評(3690)などユニコーンや新鋭企業とは違い、過去の会社ではないかと思われるところも無きにしも非ずですが、敢えて同社を訪問先に指定したのは単純に株価が安値圏に放置されていること、事業内容から見て反騰のチャンスがあること、という理由があったからです。
同社に関するレポートで売上高に占める主要事業について「ゲームは44%、クラウドは39%、WPSは17%」とし、「ゲームを主力として推進しているが、クラウドは68%増と期待の事業で、WPSも堅調に推移している」と触れています。
同社主力のゲーム事業は政策の影響で昨年同業他社と同じように低迷していましたが、しかし、同社が設立してから30年、幾多の困難な局面を乗り越えてきたように、今回の政策の解禁と同時に、ゲーム以外のセクターが大幅に増益したことが株価の反騰に寄与しています。「ゲームがなくても依然金の山だ」と現地アナリストが纏めたように、昨年6月30日までの中間期決算で、同社の純資産は133億人民元で、その内銀行預金は102億元、2017年ナスダックに上場したチーターモバイル(Cheetah Mobile)の持ち株の価値は人民元換算で約50億元なのに対して、2018年11月までの同社時価総額は約160億香港ドルで、ゲームやWPS、金山雲(キングクラウド)を計上していなくても、十分資産価値のある会社だと分析されています。
そこに急成長のクラウド事業が加わることになります。
中国工業・情報化省傘下の中国情報通信研究院によると、2017年中国のパブリッククラウドサービスの市場規模は265億元で、年平均成長率(CAGR)は36%に達し、2021年までにプライベートクラウドと合わせて900億元の規模になるだろうと言います。
クラウドの力強い成長の背景には、1.十分なニーズ(大企業でも中小企業でも)があること、2.IT大手には成熟したクラウドサービスの供給(サプライ)能力があること、3.強力な政策のサポートがあることが考えられます。
同社現在の時価総額は233億香港ドルですが、254億~295億香港ドルが同社資産に見合った合理的価値だろうと分析され、株価は18.45~21.5HKDが妥当だと指摘されます。株価は年初の11HKD台から見てだいぶ上昇していますが、決算次第ではもう一段の上昇も見込まれると考えます。(了)
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