「金蝶国際」(0268)を初めてこのコラムで取り上げたのは2017年6月14日。当社、京華投資視察団が同社所在深圳に向かう直前です。当時中国のERP市場では「南金蝶北用友」という言葉のように、「金蝶」と「用友」の2ブランドが天下を南北二分した状態でした。有望な市場と見込んで、深圳に飛んで行ったのです。株価は3.10HKDだったと記憶しています。あれから3年半立ちますが、その間も「クラウドサービスの中国一を」、「ソフトビルにパワーを」、「金蝶国際の中間期決算を読む」、「金蝶国際 株価は動いた」、「金蝶国際 株価が疾走」、「粗利率81.5%のソフト企業」、「黒字化はすぐそこまで」、「成長に新しいエンジン 金蝶国際」と、フォローし続けました。昨日(12月17日)の終値は28.2HKDと10倍まであと一歩のところまで上昇しています。
2017年6月14日のコラムです。ご参照ください。
ソフト業界の異端児
「クラウド」(cloud=雲)と言う言葉が普通に耳に入る時代になりました。「インターネット+」が提唱されて以来、アリババクラウド(Alibaba Cloud)、百度クラウド(Cloud Baidu)等のように各社がしのぎを削るようにクラウドを開発するようになっています。来週出発する当社中国投資視察団が深センでソフトの会社から5年かかってクラウドへの構造転換完了を宣言した企業を訪問します。
「2012年から構造転換を模索し、2016年にやっと完成した。成長率も5年来の最高を記録した。この5年間はとても困難で、そしてイノベーションに満ちた、とても忘れられない日々だった」
こう振り返ったのは金蝶国際軟件(0268)の徐少春会長。2016年度本決算発表会(3月)の冒頭挨拶の一節でした。
徐少春と言えば、業界でも少し異端児的存在。今年の5月4日、同氏は北京大学での新製品発表会で、同社主力のERPと身分的象徴のCEOの椅子をゲストと共にハンマーで叩き潰したのです。
ERPとはEnterprise Resource Planning・企業資源計画(統合基幹業務パッケージ)のことで、代表的なものは、例えば会計ソフトです。従来の主力製品との決別と言う意味でのパフォーマンスですが、従来の製品を叩き潰すのはすでに4回目。2014年の5月、ノートパソコンを叩き潰してモバイル通信への移行を宣言しました。同年8月パソコンのサーバーを叩き潰して金蝶クラウドERPのリリースを発表。そして2016年の5月、ご自身のオフィスも破壊して組織の境界線を打破することを宣言。
そして今年。ERPは管理ソフトで、1993年から初代製品を開発してすでに6600万社に納入し、2005年から以降12年連続(IDC統計)中小企業マーケットでのシェア№1を確立しています。
にもかかわらず、自らの市場一位を破壊しようとしたのです。何故なのか。「伝統的ERPは複雑なプログラムの管理システムで、この30年間世界的ERPメーカーもただ一つの事しかやっていない。それはERPシステムのグレードアップだ。つまりERPプログラムシステムの改訂や修正を繰り返し、余分なものを付け加えたりしてシステムをますます複雑にし、効率を低下させたり応用がますます悪化させたりしていた」と徐董事長(会長)が言う。
ERPの概念を再構築しようと、分散化、モバイル化、ソーシャル化を通してクラウドで企業に規模的、経済的情報サービスを提供しようとするのが、金蝶雲(kingdee Cloud)だ。
2016年の本決算では、同社金蝶雲サービスの売上高は前年比103%増の3億4100万元となりましたが、全売上高でのシェアは18.3%で、売上の8割以上は従来製品であることに変わりはありません。果たして同社が標ぼうするクラウドへの構造転換は近い将来の同社業績を支えられるのか、発表会での投資家との質疑応答から糸口となるような質問とその回答を次回拾ってみたいと考えます。(了)
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