師走に入り、また1年が過ぎ去ろうとしています。コロナ禍で晴れ晴れとしない空気が漂う中、日本株は29年振り高値、ナスダックは史上最高値更新など、株式市場は好調を続けています。香港ハンセン株価指数は高値までこそは程遠いが、主要銘柄の高値は続出しています。そのこともあってか、「徐さんの中国株」は登録会員数を遥かに上回るアクセス数が毎日のように更新されています。
そこで年末年始にかけて「徐さんの中国株」でこの2年ほど取り上げた銘柄を振り返り、最新情報を加えながら、会員以外の読者にも公開したいと考えます。
その第一弾は「シャオミ」で、2018年7月11日(シャオミIPO翌々日)のコラムです。その後同社株価が8香港ドル台まで落ち込み、このコラムで十数回さらに取り上げ、昨年の勉強会でもご紹介しています。今年に入り同社株価は見事に回復し、上場来高値の28.4HKDを記録しています。
「投資家に儲けさせるのが企業家だ」(2018年7月11日コラム)
「シャオミの証券コードは1810。これは2018年の上場と2010年の創業を表したものだ」。シャオミ董事会秘書役の陳曦氏は証券オードに秘められた秘密をこのように明かしています。「初めてHKEXの鐘を鳴らしたのは11年前の2007年10月、金山軟件 (キングソフト)上場の時だった」とシャオミ董事長の雷軍は興奮醒めない様子で11年前の様子を振り返えりました。
キングソフト(3888)は、1999年に上場を準備したのですが、上場を叶えたのは8年後の2007年でした。同じ8年間ですが、今度はシャオミを立ち上げてから8年目に上場を果たしたのです。
しかし運悪くというのでしょうか、2007年10月は中国のA株が6124ポイントをピークに下がりに転じ、それから米国発金融危機の影響も重なって2009年まで下がり続けたのです。
シャオミの上場に至って、今度は米中貿易戦の最中にあり、上場初日の公開価格割れについて雷軍氏は、最近市場全体が低迷し、株価の短期間の上げ下げは重要なことではなく、長期的な価格がより重要だ。市場低迷の際、上場できること自体大きな成功の証だと述べ、更に「シャオミの製品にイノベーションの要素がたくさん含まれている。シャオミはハードのメーカーだけではなく、Eコマース(ニューリテール)の会社でもあり、インターネットの会社でもある。我々の考えは簡単だ。ユーザーのほしいものを作ることだ。この8年間で100種類以上の製品を開発した。もちろんむやみに拡張するわけではない。拡張の三原則には、現在のユーザーの延長線にあること、Eコマース(ニューリテール)ルートに乗せられること、ノウハウとキャパシティを考慮してのことだ。このようにして第1四半期の伸び率は前年比85.7%増と、史上最高を達成できた」。
シャオミの売上高の推移を見てみると、2015年には、668億1100万元、2016年には684億3400万元、2017年には1146億元と、2017年の前年比伸び率は67.5%、経常利益にしてそれぞれ13億7300万元、37億8500万元、122億1500万元と2017年の伸び率は222%に達しています。
それでも、初日の取引で公開価格割れになったのは、雷軍董事長の次の発言の影響が大きかったと思われます。
シャオミという会社を立ち上げの際、VCの支援が大きかったことに触れ、初期の500万米ドルの投資の利回りはすでに866倍に達したことを披露し、更に13人で立ち上げた会社は現在1万9000人まで増え、そのうち7000人の社員が原始株を保有していることを明らかにしています。
同社発行済み株式の95%は投資銀行への国際割当で、残り5%は香港市場で発行しています。初期投資のVCのロックアップ期間は6カ月~1年間で、800倍を超える利回りだといつ売却しても莫大な利益を手に入れることへの警戒で買い注文が控えられています。
しかし、初日の反省からなのでしょうか、雷軍氏は公開初日の上場祝賀パーティで、「公開初日で投資された方に倍以上儲けさせる」と豪語したと伝えられ、それがまた上場2日目で、前日比13%高という結果に繋がっています。
大手資産運用会社のマッコーリー・アセット・マネジメント(MAM)9日のレポートでシャオミのビジネスモデルに競争優位性があるとして2018年~2020年までの複合経常利益は40%あると試算し、目標株価を30HKDとはじき出しています。
バリュエーションが1000億米ドルの見込みから、700億ドルへ、さらに蓋を開けると実際は約500億ドルになったことに関して、B2C大手の京東(JD)の劉強東董事長は、「発行価格は下限の17HKDを見て雷軍も肩の荷を下ろしただろう・・・むやみに発行価格を高くする輩もいるが、投資家のポケットに手を突っ込む人は企業家ではない。投資家に儲けさせることこそ凄いことだ」と雷軍氏を援護射撃しています。
中国版「ジョブス」、シャオミをどこまで成長させるか注目してみたいと思います。(了)
ドキュメンタリー「お久しぶりです、武漢」で注目されている日本人監督の竹内亮が新たに制作した「ドキュメント中国新世代:中国で活躍する日本人が見た中国」がこのほど公開されました。創業10周年を迎えるシャオミを題材とした作品で株主としてもシャオミの強さを垣間見えるのではないかと思います。約30分の作品でぜひご覧ください。