17日付『徐さんの中国株』――「空売りに善悪はない」で、空売り機構の「Citron Research」を香港証券先物取引委員会が、裁判所に告訴したことを取り上げました。
告訴の対象は、「Citron Research」を率いるAndrew Left氏で、同氏は2012年6月21日、香港上場の不動産大手、中国恒大(3333)が「不渡り状態にあるにもかかわらず粉飾を続け、投資家を欺瞞している」ことを趣旨とするレポートを発表して投資家に誤解を生じさせ、レポート発表の前に同社株、410万株を空売りして税引き後170万HKDの利益を不正に入手したということです。
香港の市場失当行為審裁署は同レポートに虚偽や重大な事実について誤解を招くような内容、重大な事実の欠落」があることを認定し、一昨日(19日)、上記判決を出したのです。
判決によると、Andrew Left氏は判決日から5年間、香港で証券業業界の参入禁止と不正に上げた利益の返還、そして再犯の際、刑事告発もあるという香港証券委史上も初めてのことでした。
では、そもそも空売り機構はどうやって
ターゲットを観察、選定し、
レポートを作成していたのでしょうか。
空売り機構の一つ、Muddy Waters創業者のCarson Block氏は大学で金融と中国語を専攻し、業界きっての中国通であるのに対して、判決対象のCitron ResearchのLeft氏は中国に拠点はなく、2001年に設立してからアメリカ企業に対して空売り報告などを中心にリサーチ報告を発表したりしていましたが、2006年以降米国上場の中国概念株、20数社に対してネガティブレポートを発表し、その内ニューヨーク上場のITソリューションサービスの「東南融通」を上場廃止にまで追い込んだことで一躍有名になりました。
「中国市場には他にない流動性があり、空売りのチャンスが多いからだ」と中国企業を狙う理由についてLeft氏が言います。
そして調査方法について、その企業のリーダーを調べること、なぜなら通常リーダー個人の性格を企業経営に持ち込んだりするからだ。
そして現地で留学生を雇用して中国語の企業情報を集めたり、最近では中国国内で経済紙記者を雇ったりもすると言います。
具体的には、ターゲットを絞った後、その企業に関する情報――目論見書から、決算報告、臨時公告、企業のポータルサイト、報道などまで5、6年分をまず調査分析すること、
そして企業の取引先など関連当事者を調べること、関連当事者は企業の利益を不正に外部に流出させる重要な役割を果たしているからです。
最後は実地調査を行うこと。会社を訪問し、役員と面談して工場の環境や機械設備、トラックの出入りもチェックし、カメラに収めたりして稼働状況と決算報告書と一致するかどうかを調べること、などです。
こうして一つのレポートを纏めるのに、現地訪問、サプライヤーや取引先も含めて半年以上はかかると言います。
これまで空売り機構に狙われた会社は無傷で終わった会社はむしろ稀で、株価の暴落や取引再開ができないままの企業もあります。
判決に対してLeft氏の代理人は上告も検討中だとコメントしていますが、警鐘を鳴らしたことに意義があったのではないでしょうか。
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