急がば回れ

人民元の国際化は当局者の念願だったのですが、「徐さんの中国株」でもタイトルにして何回もこの話題を取り上げたことがあります。しかし、最近公的なマスコミもまた中央銀の役人もそういった発言はあまり見られなくなったのです。控えめになった理由は一昨日(7日)外為管理局の発表からある程度推測はできます。

 

発表によると、11月末現在、中国の外貨準備高は前月比691億米ドル減の3兆516億で、1月の950億ドル減に続き、今年2番目の下げ幅、しかも5ヶ月連続の減少で、(準備高は)2011年3月以来の水準となっています。

 

中国の外貨準備高は2014年6月の3兆9900億ドルを最後に、下げに転じています(日経平均ではありませんが、どこか似ているところありませんか)。それから2年と5ヶ月、外貨は9400億ドル近く流出し、割合にして実に約25%も減少したことになります。

 

外貨準備高の減少について、中央銀は、1)米ドル高で、その他の通貨(円やボンド)も切下げになったこと、2)企業の海外買収増で、外貨需要が増えたこと、3)人民元を買い支えたこと、4)投資資産の価格変動、などを上げています。

 

2015年、中国は史上初めて資本の純輸出国となりました。企業の海外買収の情報も一番多く目に入った年でもありました。そして今年9月までの3四半期の海外直接投資は昨年比53%増の1342億米ドルとなったことが明らかになっています。

資本の急速な海外流出を食い止めようと、今月6日、中央銀など役所4部門が海外の不動産、ホテル、エンターテインメント・レジャー施設など「非理性的投資」に対する監視を強化するよう通達を出しています。

外為管理局は更に、500万米ドル(約5億6500万円)を超える海外投資の場合、直接外為管理局の許可が必要だという指示まで通告しています。

 

奇しくもマカオ政庁はマカオ入りの観光客に対して、これまで無制限だった現金の持込みについて12万パタカ(約10万人民元)を超える場合、税関に申告する義務を課すと現地放送局が2日取り上げています。

 

中国系各銀行が提携する銀聯カードに関して、日本での一日の引出限度額は最初の20万円から、先週会った知人が引出は3万円まで制限されたとの情報をもらいました。

中央銀は個人や企業による資金の海外流出に規制をかけ始めたと見ていいと考えます。

 

中国税関総署は8日、11月の貿易統計を発表しました。輸出はわずかですが、8か月ぶりに昨年比0.1%の微増と転じ、輸入の同6.7%増と共に、景気が回復に向かうことを示し、また貿易黒字も446億ドル維持していますが、961億ドルの流出に追いつかない状況が続いています。

 

米株式市場のトランプ相場が続き、元安と資金流出の誘因ともなっています。

人民元の国際化は自由兌換が前提となります。自由兌換には資本市場の完全な開放がまた前提となります。市場の整備がまだ完全ではない状態での国際化はいわば「急がば回れ」ということになります。

資本を国内に留めるには、企業業績を伸ばし、魅力ある投資先にする以外ないのではないでしょうか。

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