空売りに善悪はない

香港市場特有のことが二つあります。セント株の存在と空売り機構が「横行」することです。セント株についてこれまで数回このブログで触れております。

空売り機構の「横行」について、香港証券先物取引委員会は2014年12月空売り機構の一つ「Citron Research」を風説流布の疑いで告訴しました。

 

米リサーチ機構の「Citron Research」は2014年末まで、米国と香港に上場する中国企業20社に対して150回にわたってネガティブレポートを発表し、2012年6月に発表した香港上場不動産大手の「恒大」(3333)に対するネガティブリポートは不実記載があり、投資家を誤解させることがあるとして証券委は同機構を告訴したのです。

 

このレポートが発表される前に、Citron ResearchのマネージャーAndrew Left氏は410万株の恒大の株を空売りして、レポートの発表で170万香港ドルを手に入れたことを突き止めていたからです。

 

今月6日の中国勉強会でも、空売り機構の話が出て会食の場を大いに盛り上げてくれましたが、その前に、「華瀚健康」(0587)が突然取引停止し、その原因を調べてほしいとご依頼を受けていました。

「華瀚健康」も同様のケースで、空売り機構のEmerson Analyticsに8月11日に一回目のネガティブレポートを出され、同社は取引停止にし、反論の公告を出して一週間後に取引を再開し、自社株の買戻しなど潔白を証明しようとしましたが、その約10日後の8月29日に2回目、さらに約10日後の9月8日に3回目のネガティブレポートを出され、上場廃止にさせるべきだと指摘されています。同社は9月27日から取引停止になって、2015年の本決算も発表できないままになっています。

 

Emerson Analyticsは昨年2月、水処理民間最大手の桑徳国際(0967)に対して粉飾の疑惑があるとしたレポートを発表し、同社を取引停止に追い込んでいますが、同社はその後再開と停止を繰り返し、今年の4月、香港証券委に取引停止を再度命じられて

現在に至っています。

 

香港市場で「暗躍」されているリサーチ機構は上記2社のほか、「中国金属再生機構」を上場廃止まで追い込んだGlaucus もその内の1社で、これまで同機構に狙われた会社は中国金属再生資源のほか、西部水泥(2233)や青蛙王子(現在名:中国児童護理/1259)、旭光高新(0067)などが上げられます。

 

空売りはもともとヘッジの手段として作られた仕組みで、その仕組みを逆手に取って利益を上げようとするのが、これらリサーチ機構なのですが、そのリポートを「悪意な空売り」と表現されることも散見されます。

 

中国A株には、上場ETFのほか、空売りのシステムができていないため、創業版(GEM)市場などの小型株は上がる一方です。個別株の空売りのシステムができたら、株価ももう少し理性的なレベルまで回帰できるのではとの声もあり、早急な導入が期待されます。

 

自然界には、毒蛇やクマ、オオカミなど凶暴な動物がいっぱいいますが、羊を守ると言ってオオカミを一掃すると、羊に伝染病が広がり、その内全滅する恐れもあります。オオカミに襲われるのは大抵病弱な羊で、むしろ病弱な羊をオオカミによって退治してもらった方が自然界もバランスを取り戻ります。

そのような意味で、空売り機構は羊の天敵のオオカミの役割を果たしてくれるので、投資家として病弱な羊を避ける(投資しない)ことがとても重要なことです。

 

空売りには善も悪もなく

投資手法の一つだと認識すべきです。

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