2006年8月、当時の「中国投資考察団」でロシアを訪問の際、華為技術のモスクワ支店のマネージャーを務めていた従弟に旅程の一部の手配を頼み、モスクワで会った際、当時の「邱永漢事務所」の名刺を渡したら、「事務所の株も持っていますか」と聞かれました。
その質問には当時はピント来なかったのですが、のちに華為の持ち株制度そして従弟もその株主の一員であることが分かったのです。
このように、全員株主という激励制度が華為の「奇跡」を作ったと言っても過言ではないが、103条からなる「華為基本法」では、更に売上高の10%を研究開発費に充てることまで規定し、多くの反対があったにもかかわらず、任氏は一歩も譲らず、そのため、2008年10%だった通信設備の世界シェアは2015年には、24%まで拡大し、売上高でも、競合相手のシスコシステムズ(cisco systems)を同じ年でついに上回ったのです。
真似をすることが一番早いという風潮のなかで、研究開発に投入した予算は2014年には400億、2015年には596億米ドルにも達し、研究開発や技術者が世界で7000人を超えています。常に先を見ることでほかの追随を許さない企業まで育てたのです。
BATの株主構成の半数以上は外資であるのに対して華為の株主は100%内資であることにも純粋な民営企業であることに誇りに感じる中国人が多いのも事実のようです。更に同社売上高の70%は海外からの収益であることに中国指折りのグローバル企業であることを裏付けています。
アメリカ進出を図る同社に対して、兵役経験のある任氏が軍との繋がりがあり、安全保障上の懸念があるとのことで、2008年ごろから以降米政府から進出を何回にもわたって阻止されていることは日本でも取り上げられています。中国不動産最大手の万科企業の王石会長も同じく兵役の経験がありますが、世界中どこに進出しようとも、軍との繋がりとのことで拒否されたことは一度もないことから見ても米国も華為の技術に脅威を感じたものでしょう。
華為は(中継基地など)通信設備で世界のトップを行っているほか、2015年携帯電話のスマホ市場でも前年比45%増の1億800万台を出荷し、サムスンとアップルに次ぐ世界3位で、中国市場では、2015年アップル社を超え中国一まで躍進しています。
華為技術は世界的企業になっていますが、1社のみでここまで成長することはもちろんできません。日本と同様大手企業にはサプライヤーや下請けは当然たくさんありますが、香港上場のH株で言いますと、例えば、中国軟件国際(0354)や偉仕控股(0856)、中芯国際(0981)、通達集団(0698)などが業務的にも華為と深くつながっています。
これら企業の詳細については、当社「中国企業情報」で順次取り上げて参ります。真似る時代は終焉しています。中国にも華為のような企業の続出を期待しています。