香港市場の特徴について、これまでも『徐さんの中国株』で数多く触れています。日本の証券会社経由で中国株投資をしても市場の特徴を理解した方が何かしらお役に立つと思います。
1、投資主体の多様化
日本株(投資)の6割は外国人投資家だということはマスコミからも良く耳に入ります。これに対して、香港市場も機関投資家を中心とするマーケットであることが最新のデータで裏付けています。
香港証券取引所が公開したデータによると、2015年、(香港市場に投資した)投資家の内訳は、海外機関投資家は31.3%、現地機関投資家は19.4%、証券会社の自己売買(部門)は21.9%で、三者の合計は70%を超えてしまいます。残りは個人投資家(現地2割、海外1割)となります。
また海外投資家の上位3位はそれぞれ英国の26.6%、米国の22.5%、中国の21.9%で占められ、2009年から2012年まで10%前後で推移していた内陸からの投資が2013年から以降急増し、昨年は海外投資家全体の約22%まで倍近く増え、香港市場に内陸からの資金が流入し始めていることを裏付けたと言えます。
2、財テクで生きる会社
香港投資家の間では、実業もなく、財テクだけで生きる会社のことを「老千股」(詐欺の会社)と言います。香港の本土企業で、香港の中国返還前後に電子部品の加工工場や家電の組建て、水産、海運などの事業もあって栄えていたが、深センや広東省当たりに経済特別区ができてから、工場の移転が行われ香港には抜け殻の会社だけが残り、上場こそ維持できていますが、中身が伴わないペーパーカンパニーになった会社がたくさんあります。
こういった会社の特徴には、増資や減資、分割を繰り返すことです。例えば1株1香ドルの株価は、10セントまで下がったとします。9割以上も下がった時点で、減資を発表します。10株を1株にすると株価は1株1香港ドルに復活します。
逆に、割当増資も常套手段で、現在の株価より1割程度安く割当増資を発表したとします。株価が更に下がることは目に見えていますので、これに応募すると、損ですし、応募しなければ持ち株は希薄され、これまた損になります。
香港証取の規則では、増資も減資も役員会一つで決められることなので、このような会社に投資すると、利益を上げることはまずないと覚悟しなければなりません。
3、空売り機構の暗躍
香港市場では、上場する会計のミスや業績を誤魔化す会社を見つけて先にその会社の株を売っておいて、すぐにネガティブレポートを発表して、株価が暴落したら買い戻して利益を上げる会社がいくつもあります。空売り機構に問題点を指摘されたら、まずは1割や2割程度は暴落します。その問題点が真実の場合、取引停止引いては上場廃止(例:中国金属再生資源)まで追い込まれるケースもあります。ネガティブレポートが出された「前科」のある会社に投資する場合はよっぽど注意しなければなりません。
4、自己責任の投資
中国内陸の監督機関は「投資家保護」を口癖のように語りますが、香港の監督機関は自由市場の秩序の維持を理念にしています。したがって植民地統治時代の発行制度や市場のルールをそのまま流用しているケースが多く、そのルールを守りさえすれば、「老千」株でわかっても取締も警告もせず、投資家の自己責任に任せる姿勢を貫いています。詐欺師に引っかかったら引っかかった方が悪いという考え方です。
このような市場なので、巷で聞いた情報で投資するのではなく、その情報をよく吟味し、理解した上で投資先を選定してほしいものです。
<視察団締切のお知らせ>
6月の投資視察団は今月の16日を持って締切とさせて頂きます。
6月13日(月)北京で(四環医薬を訪問)、6月17日(金)上海で(東瑞製薬を訪問)の一日のみ参加ご希望の方もお問い合わせください。