2020年に中所得国の罠から脱出

投資視察団の訪問先で利用するホテルはオリエンタルやシャングリラ、インターコンチネンタルなどいずれも地元で超一流を数えるホテルです。しかし、バンコクやシンガポール、香港と違って、北京や上海のホテルの場合、地元の人も大勢利用されていることにいつも驚かされます。一泊数万円もするホテルにビジネスマンのみならず親子連れの利用が日常茶飯事のように見かけてしまいます。それだけポケットマネーが増えたということでしょう。

日本での爆買いもその一例ですが、中国人はどれだけお金持ちになり、目指す目標はどこまででしょうか。

中国経済の減速について様々な憶測が出ています。これについて李克強首相は11月初めの企業家懇談会や今月22日に開かれたEAS=東アジアサミットでの訪問先、マレーシアでの中国・マレーシア経済フォーラム、そしてその足で参加した中国と中欧、東欧16ヶ国との経済協力に関する首脳会議(24日、蘇州)などで中国の目指す目標を改めて明確に打ち出しています。


「Coolpad」深セン本社 スマホも過当競争に (11月視察団訪問)

李首相は11日の企業家懇談会で、「2013年、中国の一人当たりGDPは7000米ドルを超え、中所得国の仲間入りを果たした。2020年まで小康状態の社会を築き上げることは第13次五か年計画の目標で、それまでの5年間、毎年6.5%の成長を維持すれば、現在の為替水準と世界銀行の基準からすると、7000米ドル台を1万2000米ドル台まで達成することになる。この目標を実現すれば、13億人の中国は中所得国の罠から脱出したことになる。これは大変な目標である」と述べるともに、戦後、100以上の国や地域が中所得国に仲間入りしたが、しかしここから脱出した国や地域は少ないとして、「中国の伸び率は現在10兆米㌦を基数にしており、今年のGDPの1%は5年前の1.5%、10年前の2.6%に相当する。減速とは言え、絶対値は伸びている」とこの伸び率を維持すれば目標達成は可能だとの認識を示しました。

中国経済の現状について、上層部を含め経済界では「三期畳加」(三期重複)――経済の伸び率の転換期(高度成長から中高速成長へ)、構造調整の陣痛期(構造転換期)、前期刺激策の消化期(刺激策で生まれた生産過剰を吸収、消化する期間)という言葉を使って描いています。この困難な時期が長引くと、目標どころか、中所得国のままで、延々と脱出できなくなる状態のことを中所得国の罠(に陥る)と言います。

李首相は中所得国の罠脱出には、技術創新のみならず、体制やメカニズムのイノベーションが特に必要だと指摘し、具体的には、インターネット+や大衆創業、万人創新、「中国製造2025」を通して5年以内にこれを新しいエンジンとして「中所得国」の罠を乗り越えようと訴えています。

中国と中欧、東欧16ヶ国との経済協力に関する首脳会議では、「中所得国の罠を乗り越えることは中国近代化の一里塚であり、中欧、東欧を含む世界各国にも発展のチャンスを与えることになる」と中国企業の海外進出と金融、教育、医療、養老サービスの市場開放を約束しました。

最近、深センに隣接する東莞市でこの一年4000社も企業が倒産したという報道がマスコミを賑わせていますが、取材に応じた袁市長は、2015年10月まで、移転また閉鎖した外資企業の数は243社に対して、新たに登録した外資系企業は698社で契約総額も17.7%増の38億5000万米ドルだと旧来型加工業企業の閉鎖や移転を認めつつも、創新型企業の進出が増えていることを指摘しました。

5年後、2020年は東京オリンピックの年でもあります。中国が中所得国から高所得国に仲間入りするか、株式市場の変化を含めてとても興味深いところです。

 

 

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