去る者あれば来る者あり

ソフトバンクの孫正義社長が
就任前のトランプ米次期大統領とお会いし、
二人揃ってトランプタワーのロビーで
記者会見した様子が日本で大々的に報道されました。
孫社長が持参したレジュメに台湾の「鴻海」という
文字も映され、ソフトバンクの500億ドルのほか、
鴻海も70億ドルを出資することが世界に知らしめたのです。

 

その鴻海がグループ企業の富士康の工場を
米国に移転させる計画があるとして、
自動車ガラス専門の福耀ガラスの米国工場立上げと共に、
中国から資本と一緒に製造業も海外流出するのではないか
と、中国のネットを炎上させています。

 

たまたま同じ時期に、マクドナルドが20億米ドルで、
中国内陸と香港にある2200店舗と
中国での経営権(20年間)を、
中信グループ(CITIC)をはじめとする企業連合に
売却することが報じられ外資撤退論が再燃されています。

 

トランプ氏当選と米利上げ後、主要国通貨
対米ドルの為替で一様に切り下げられています。
人民元とで変わりはありません。
中国企業による対外直接投資(ODI)増で、
米ドルの需要増が高まり人民銀行は外貨準備高から
「貯金」を取り崩して対応し、その外貨準備高も
年初から数千億単位で減少しています。

通貨規制で国民一人当たり年間人民元を
5万米ドル相当までの外貨に両替することが
認められているので、年を明けると、
またもその年の枠が付与されるので、来年1月の
外貨準備高は3兆ドルを割り切るだろうと憶測されます。

 

しかし、福耀ガラスの米工場立ち上げと同じく10月に、
米ボーイング社は海外初の組立と引き渡しセンターを、
65億元(約10億ドル)投じて
浙江省の舟山群島新区に作ることを発表しました。

ボーイング737型機を年間100機規模の
米本土以外初めての工場となると言います。

また孫・トランプ会見の約2週間後、
「鴻海」は傘下の富士康経由、広州で次世代液晶工場を
450億元(約70億ドル)で作ることを発表しました。
新しい工場は年初に買収したシャープの液晶ラインを
丸ごと広州に移転する計画だと言われます。

 

他人事ながら、ボーイング社はドル高で2017年度から
月間8.3機を作った777型機を5機まで減らす
(40%減少)計画を発表。
2014年に1432機もあった注文が
2015年768機まで減少し、先月(11月)末までの
注文は468機まで留まっているということです。

一方のエアバス社は10月末ですが、
商用飛行機572機の注文残があり、10年ほど前、
天津でヨーロッパ以外最大の組立工場を、
数十億ドルを投資して作り、これまで
合計300機以上も引き渡しを完了しています。

 

このほか、シスコがイノベーションセンターを広州に、
ファイザーが世界3番目のバイオ・
テクノロジーセンターを杭州に、
インテルは投資額70億ドル以上のメモリー工場を大連に、
半導体焼付工場を成都に、またシーメンスが
デジタル化工場を成都にそれぞれ立ち上げることが
発表されています。

 

このように単純な撤退や流出よりも、経営者として
経営資源の最適化を求めている行動だと
理解した方が宜しいのではないでしょうか。
去る者あれば来る者あり、

正にその通りだと合点するところです。

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