叩かれてますます強くなる

第11回京華投資視察団が一週間の訪問日程を終え20日帰国しました。宿泊の上海オークラガーデンホテル(花園飯店)から浦東国際空港に向かう途中、数千台もスペースのある駐車場に囲まれた大型のアウトレットが目に飛び込んできました。ガイドさんからは、「このような施設は市内に5、6か所もある。昨年ご案内した上海自由貿易区の中にある免税店はいまこういったアウトレットまで拡大している」と話してくれました。 

昨年11月に行われた第9回視察団の際、上海で自由貿易区を訪問し、エリア内のスーパーマーケットも案内してもらいました。作りはウォルマートやカルフールなどと大差ありませんが、ワインなど輸入品は市内のスーパーより断トツに安いことが印象的でした。「輸入品は陸揚げしてそのままスーパーに」と安さの理由を関係者が語ってくれました。

  
北京の名レストランの一角「羲和雅居」
 

視察団催行中の今月17日、中国とオーストラリア自由貿易協定(FTA)がオーストラリアの首都キャンベラで調印されました。これで22か国と地域を含む14の自由貿易協定を中国が結んだことになります。オーストラリアとのFTAは、ゼロ関税とネガティブリスト、最恵国待遇などの面で、これまでのFTAと比較しても開放度の最も高い二国間FTAだと言われます。 

中国は2001年世界貿易機関(WTO)に加盟し、工業用品の「世界の工場」となって加速度に成長してきました。成長の要因は世界的に見ても低い人件費と豊富な資源があったこと、そして付加価値が低いが、国内でも需要(実需)が旺盛であったことでした。しかし30数年の高度成長を経て、成長要因のいずれも崩れてきたと言えます。 

WTOの規則では、加盟国に自由貿易、関税撤廃などが義務付けられ、加盟後15年経過した場合、自動的に「市場経済国」と見做し、加盟国に関税など平等のルールを適用することになっています。中国に続きその後ロシアも加盟し、主要国がともに加盟したらこれまでのルールがあってないのと同然で、新たなルールが必要となってきます。 

それがTPP誕生の背景でもあります。TPPは現在日本も含めて12カ国が交渉中ですが、中国が対象外のため中国包囲網と言われる所以です。 

TPPの最大の貿易国は日米であることに間違いありません。しかし、現在、TPP交渉中の12カ国の内、アメリカ、日本、カナダ、メキシコ以外の8カ国がすでに中国と2国間のFTAを結び、中国包囲網の意義が薄れてきたとも言われます。 

それより、市場を開放することにより、中国企業へのプレッシャーがより意義が大きいと考えます。これまでの「中国投資考察団」の訪問企業を振り返ればわかることですが、製紙や鋼管、石炭、レアアース、ガラス、電化製品など従来の「中国製造」の典型的な企業が多く、世界の景気が良い時に株価も恩恵を受けて好調を続けていました。しかし人件費の高騰と世界的需要の低迷が重なると、企業の業績がダウンし、引いては株価に影響が出るようになっています。

市場を開放し、世界を舞台に競争することにより、世界で「叩かれて」初めて強くなるのが「中国製造2025」だと考えます。今回の視察団で訪問した企業は何社も「中国製造2025」のスタートラインに立っています。今後の成長が興味深いところです。

 

 

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