「香港市場捨てたものじゃない」

A株市場がその希少価値でH株やナスダックよりも上場企業の価値が高く評価される傾向があることを前回お伝えしました。そのためもあって多くの「中国概念株」がA株への回帰を選択し、海外市場から撤退して国内のA株での上場を選択しようとしています。

前回の「徐さんの中国株」で触れた匹克体育 (1968)は昨日(26日)私有化(公開買い付け)のオファーを公告で告知しました。同私有化案によると、公開買い付けには24億香港ドルを計上し、これを完成させると、香港での上場を廃止することになります。

ここ最近私有化案を発表したのは、同社のほか万達商業など数社もあります。A株回帰はドミノ連鎖にならないよう、香港証券取引所シニア中国経済エコノミスト事務所名で、今月25日付で「香港市場株価低迷――投資家と発行人にとってのチャンス」と題したレポートが発表されました。

レポートでは、例として、香港市場上場企業のPERが全体的に低いことを認めつつも、配当利回りがよく、金利裁定やヘッジのチャンスもあり、融通の効く融資システムなど株式発行体もまた投資家にとっても香港市場はメリットがたくさんあることを力説しています。

2015年末現在、ダウ平均のPERは15.61倍、S&P100指数は19.18倍、ナスダック指数は23.5倍で、また5月末現在上海証券取引所の平均PERは13.47倍、深セン証券取引所に至っては35.94倍となっているのに対して香港市場は5月末現在9.12倍と低い水準に留まっていることが明らかになっています。PERが低い原因について、同レポートは伝統的金融業のPERは一般的に低く、ハイテクやヘルスケアなどニューエコノミー業界のPERは高い傾向にあるとして、香港市場は金融株が全体の約40%を占めているため、PERは低く、ハイテクやヘルスケアが約60%を占めるナスダックはPERが高い市場の代表になっていると指摘しました。

一方、PERが低いことで、配当利回りが他より高いことも特徴だとしています。このほか、投資家の構成も企業価値の評価に影響しているとし、香港の場合、現地機関投資家は約50%、海外の機関投資家は約30%、個人投資家は約20%の機関投資家を主とする市場で、内陸市場は個人投資家が大半で投機的な売買でPERを押し上げている要素もあると指摘しました。

上記のようなことで、AH同時上場の企業もあり、A株に対してH株には相当割引もあるので、同じ会社ならA株よりも株価が低いH株の方がより多くのインカムを得ることができるとしています。最後に、香港市場は完全な自由市場で、資本の出入りも自由で、IPOの発行母体なら簡単に国際的な機関投資家に接することもできますし、彼ら経由で世界的マーケットに自社を売り込むこともできます。また海外でのM&Aや事業再編もスムーズに進めることができると、香港市場はPERが低いからと言って「捨てたものじゃない」と香港市場の重要性を訴えました。

証券取引所のエコノミストが自らの位置付けを力説すること自体異例なことで、内陸企業のA株への回帰を深刻に受け止めていることが伺えました。

 

<香港視察締切のご案内>

8月24(水)~27日(土)の3泊4日の香港視察。実務のほか、上場企業2社の訪問が確定になりました。最後の日のディナーは香港島側「福臨門」を予定し、久しぶりの方もどうぞご一緒ください。今週金曜日(29日)参加お申し込みの最終締め切りとなります。

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