こっそりと財を成す経営者 ネットイース創業者

 自社増資分を買戻す契約(VAM)まで結んだ商業不動産大手の万達(ワンダ・グループ)は資金調達のため、金のなる木の「万達電影」の一部の株をテンセントが大株主の「中国儒意」(0136)に譲渡してしばらくすると、増資に応じた「万達商業管理」大株主との間で、上場期限の23年末から26年末まで延長することで合意した伝えられ、23年末までの買戻しはせずに済んだのはいいのだが、傘下企業の支配権を失ったりなど大きな授業料を支払ったことになります。出しゃばりに対してこっそりと財を成す企業家がいます。

 「網易 香港上場初日5.69%高」などで時々取り上げる網易(ネットイース・9999)創業者兼董事長の丁磊です。
 中国のIT系と言えば、テンセントやアリババ、百度、美団、京東、PDDなどメディアによく登場する企業の面々を思い浮かべますが、控えめな網易とその創業者は表舞台に出ることは殆どありません。
 「インターネットの老舗 ネットイース香港上場へ」などで同社について紹介しているので合わせて読むと理解しやすいのですが、大手の株価が相次ぎ発行価格を割り切る中、同社株価が堅調に推移していることが改めて注目されています。そして先週水曜日の13日、株価上昇のお陰で同社時価総額は5425億香港ドルに膨らみ、生活関連サービスの美団(3690)を逆転して、テンセント、PDD、アリババに次ぐ時価総額4番目のインターネット企業になったことが話題となっています。
 改めて話題になったのには、ITバブルの2021年2月の美団の時価総額は網易の約4倍だったのが、2年未満で、立場が逆転になったからです。外部環境の変化で大手の株価がいずれも下がっていますが、美団は高値からは80%以上下がっているのに対して、網易の下がり幅は20%程度で、20年6月香港上場時の発行価格は123HKDで、昨年10月の中国株暴落で80HKD台まで下がったものの、現在160HKD台まで上場来高値に少しずつ近づいています。
 先月16日発表された第3四半期本決算は、売上高が11.6%増の273億元、経常利益が23.4%増の170億元、株主に帰属する純利益が17%増の78億3700万元と、老舗でありながら成長が続く数少ないIT系で、株価も年初からプラスになる中で、新進のPDDと並び、大手IT2社のうちの1社となっています。
 第3四半期の配当について、1株当たり0.099の計画も発表されていますが、香港上場銘柄のうち、四半期ごとに配当を実施する中でも、このコラムでフォローしている中では、香港上海銀行(HSBC・0005)と中国生物製薬(1177)くらいでしょうから、株主に優しい会社であることも言えるかと思います。
 かつて中国の長者番付で1位にも輝いた同社創業者で、控えめなお金持ちなのです。

 

 

 

 

徐さんの中国株の最新記事