シャオミが動く

 新型コロナウイルスが猛威を振るっています。感染者も死者も2003年のSARSを超える勢いです。中国にとってまさに「国難」そのものですが、「震源地」の武漢出身者にとってこういう時こそ育ててくれた「恩返し」の時です。生まれも大学出身地も武漢だった小米集団(シャオミ)雷軍氏はさっそく動いたのです。
 「できる限り、またできるだけ早く武漢に感染予防や拡大抑制に必要な物資を届けよう」。新型肺炎の拡大が想像以上に深刻であることを知らされたシャオミ創業者で武漢大学を卒業した雷軍会長は武漢市が閉鎖される前にこのように部下に指示を出しました。
シャオミの武漢本部には、社員数が北京本部に次ぐ約1500人が在籍しています。武漢本部の劉国俊総経理はコロナウイルスの情報が出回った今年の元旦前後に社員のための感染予防用マスクや体温計、薬品などを備蓄するよう用意周到に準備していました。事態が深刻すると、1月18日時点で社員の自宅待機と勤務を命じ、最小限の出社命令を出したのです。
 1月20日、専門家は、今回のコロナウイルスによる感染はヒトからヒトへの可能性を否定できないと宣告すると、マスクなど爆発的に売れて実店舗も通販のショップも品切れが続出したのです。
 1月23日、雷軍の中国版ツイッター、微博(ウェイボー)のコメント欄に同社傘下のEコマースサイト、「小米有品」のマスクがすべて売り切れという表示なっているとはどういうことかと、厳しい問い詰めのコメントが相次ぎました。
 のちにわかったことですが、シャオミは22日、同社通販で売りに出しているマスクなど感染予防用の商品、合計1万7千点をすべて回収し、武漢の医療機関に寄付することを決めたからです。
 しかし、商品を集めたのはいいのですが、武漢はすでに閉鎖が決まり、武漢に運ぶことがまた難題となったのです。空輸は通常1週間前からの申告が必要で、陸路では大晦日も迫り、例え武漢市内に入っても脱出できなくなる可能性もあるので、ドライバーの募集もまた困難となったのです。そこで同社は通常輸送の何倍もの運賃を提示し、全国の6大配送センターから武漢に一番近い拠点まで24日までに届き、武漢本部が手配したトラックで25日までに、マスクや体温計、防護服合計1万7千点、金額にして約300万元(約4500万円)相当の緊急救援物資を各医療機関まで届けたのです。全国から寄付された緊急物資の内、第一陣として医療現場に届いたと報告されています。
 そして26日、「小米有品」は調達した消毒液を含む防護用品の販売を再開し、武漢市が所在の湖北地域のユーザーは同社APP経由で1品を1セント(0.01)で購入できるように支援を続けています。
 第一陣の救援物資のほか、傘下企業は北京や武漢の医療機関にさらに抗菌マットレスや空気清浄機、スーツケース、防護服、医療用手袋なども寄付用として28日までにすでに届いています。
 シャオミ武漢本部の劉国俊総経理は、多くの人が武漢から脱出している中、自分のことを「逆行者」と呼んでいます。雷軍氏の決断も含めてシャオミの動きは現地医療機関のみならず、きっと投資家にも記憶されることでしょう。

 

 

 

徐さんの中国株の最新記事