人民元安だが、大きく心配することはない

米ドル指数(ドルインデックス)は昨夜取引時間内に、13年半振り101(100.94)寸前まで迫りました。そのため、円は6月1日以来5か月半ぶりに110円台のドル高円安となりましたが、オフショア市場での人民元は今朝1ドル=6.9元を突破し、8年振りの元安水準で、また実に10日連続のドル高元安となっています。

 

中国株式市場では、深セン、香港ストックコネクト(深港通)の開通が期待されていますが、市場筋は「今月21日にでも開通」との見通しが示されたのですが、18日現在発表されていないことを見ると、開通は12月まで先延ばしの可能性が出ています。

 

人民元対米ドルの為替は昨年8月11日からの切下げ以降、すでに10%以上値下がりしています。トランプ氏当選が伝えられてから元安が加速し、米の早期利上げ観測も重なって資金の海外流出懸念が再び高まっています。

 

元安の今、深港通を始めると、資金流出が加速し、元安に拍車がかかるとの声も聞きますが、杞憂に過ぎません。深港通は内陸の投資家が国内資産を分散させるルートの一つであることに間違いありませんが、しかし、このルートは密閉されたトンネルのようなもので、入り口と出口があって、途中で外へ出る(流用する)ことはできませんし、また(決済して)元に戻らないと、(投資の)意味がありませんから、いったん外(香港)へ出たお金は必ずまた内陸に戻ることになっているからです。元安加速という懸念は厳密にいうと心理戦他ならない。

 

では、元安はいつまで続くものでしょうか。

選挙期間中のトランプ氏の主張の一つに、「米国内の雇用を維持するため、大統領になったら中国からの輸入品に対して45%の関税をかけること、中国を為替操作国に指定すること」があります。

 

関税をかけるとは、取りも直さず、中国製品が安すぎること、為替操作で人為的に通貨を低く抑え輸出競争力を高めていることなので、氏が大統領になる1月以降の為替に投資家として十分注意してほしいと考えます。

 

トランプ氏の政策や主張を見てみると、同じく共和党で、1981年大統領に就任したレーガン氏といくつも共通点が見えてきます。

 

二人ともあまり政治経験がなく、同じく70歳くらいで、民主党候補が優勢と伝えられた中で当選し、レーガン氏は就任後、小さな政府(「政府は問題を解決しない。政府こそが問題だ」という発言)を掲げ、財政支出の削減と企業や個人に対する減税、そして在任期間中、「プラザ合意」を通してGDP世界二位の日本に対して大幅な円高を誘導し、日本のバブルの生成と崩壊につながったことは定説になっています。

 

減税と小さな政府の主張はトランプ氏も共通しており、GDPが日本にとって代わって世界二位になった、主要な貿易相手国の中国の通貨に対してどのような政策を取るのか、関心の高いところですが、目先の多少の変動に一喜一憂することはないでしょう。

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