流動性VS投資家心理

中国国家統計局は本日、7月から9月までのGDP(国内総生産)成長率は6.9%であると発表しました。市場予想の6.8%より0.1ポイント上回って市場に安ど感が広がり、本土市場は買い先行で昼前には上昇しています。 

今月5日のブログでは、「遅刻はあっても欠席することはない」と香港市場にチャンスが訪れることを触れています。ハンセン指数は9月30日の20846ポイントから先週金曜日(16日)の終値、23067ポイントまですでに10%近く上昇し、この勢いはしばらく続くものと見ております。 

年内には大相場が訪れると見た理由もこれまで触れておりますが、折しも信用取引の急拡大とこれに急ブレーキをかけた反動で右肩上がりの市場は頓挫し、経済紙記者や中信証券最高幹部の連行、引いては監督官庁の証券委の主席補佐官の逮捕などインサイダー取引が再度クローズアップされ、投資家心理もどん底まで冷え込み、9月までの上海総合指数の下落もこれを如実に物語っています。 

では、香港市場も含めて今後どのような動きになると考えられるのでしょうか。まずマクロ的には、GDPの成長率7%は就職率の確保と言う意味でもこれを達成する必要があります。かつてNHKの討論番組に出た邱先生は「中国政府は世界一お金を持っている政府だ」と発言し、出席の評論家がムッとした場面もありました。

財政政策、通貨政策、投資政策など公共資源の運用では、我々が想像している以上に、自由に働かせる道具を持っておりますので、構造転換を達成するのには、十分時間稼ぎができるというのが大方の見方です。しかし一、二年の陣痛は我慢のできるところですが、李克強氏の首相1期目の任期中に、なおも構造転換という痛みからから抜け出せないままでは、完全に中所得の罠にかかってしまい、泥沼の経済になってしまうので、国家総動員でも目標達成をすると考えられます。 

ミクロ的には、市場に十分な流動性が確保されていることです。これまでの不況の原因の一つに流動性不足だと良く指摘されますが、9月の人民元の融資残高は1兆500億元で、同じ時期の最高を記録し、M2の残高も前年同期比で13.1%増加した135兆9800億元となっています。中央銀行は10日貸付資産担保再融資制度のテスト実施エリアを北京、上海、重慶など九つの省や市に拡大することを発表しました。さらに、15日(木)、財政省は10年物国債の入札金利は2.99%だと、2008年12月以来6年10か月振りに3%を割り切ったことを公告で明らかにしました。 

一方、民間通貨基金の座標的存在である、アリババ傘下のYuePay(余額宝)の利回りは今年6月に4%を割切るのに続いて今月初めに2013年6月に当該ファンドが募集開始して以来初めて3%を割切る水準(2.948%)になったことがわかりました。 

経済の構造転換は急務ですが、資本はあくまでも利益を追求する性質のものです。これら流動性はいま最も利回りの良い資産を狙っていることが言えます。国債や通貨基金の利回りは3%を割切り、中央銀の更なる利下げも視野に入った上、実体経済は依然不透明さを増しています。株式市場は当然の選択肢の一つですが、流動性VS投資家心理、勝つのはどちらでしょうか。

 

 

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