香港は海外投資の窓口

香港は「ショッピング天国」だと言われた時代がありましたが、今はその言葉自体あまり聞かなくなりました。と言ってもバブル経済を経て近年日本人は国内でも「買い控え」をし、必要最低限で満足できる時代になったのです。

今回の香港視察は、九龍側、尖沙咀(チムサアチョイ)の東にあるニューワールドミレニアムホテル(旧日航ホテル)に泊まったのですが、その真向かいに香港最大の免税店(DFS)があります。久しぶりに中に入ったのですが、まるで新規開店のショッピングモール状態で、内陸からのツアー客で歩くこともままならず、ほんの一分も足らずで店を出たのです。香港一の繁華街、ネーザンロードでもまた同じ状態で、DFSはツアー客なら、ネーザンロードは多国籍で、皮膚の色の違う観光客、地元市民、客呼びなど様々な人種で溢れていました。宝飾店や化粧品中心のドラッグストアなど客は入っているものの、たまたまでしょうか、買い物する姿はあまり見かけませんでした。

小売りの卓悦控股(0653)は29日上半期の決算を発表しましたが、予想通りの赤字転落。同じく小売りのSaSa(0178)や宝飾の周大福(1929)も今期決算でいずれも前期比マイナス成長となっています。

香港政庁統計局によると、2016年上半期の香港小売業の売上高は昨年同期比で10.5%減の2197億香港ドルで、通貨高もあって香港の小売業は2009年の金融危機以来最も困難な時期に差し掛かっていると言います。

しかし、銀行の窓口など、昔は英語と広東語ばかりだった言葉は最近北京語が増え、今回たまたま立ち寄った銀行の窓口にも、口座開設や預金の預け替えを依頼する内陸からの人が列を並んでいるのを見ると、香港を海外投資の窓口にする個人や企業が確実に増えてきていることを実感しました。

昨年、中国の金融当局は、香港での保険加入に「銀聯カード」を使用した決済額の上限を設定しました。現金の持ち出し規制のある内陸からのキャッシュの持ち出しができない分、保険会社はカード決済を導入し、多くの利用者がこの方法で合法的に資金を海外に移したりしていました。

内陸の一年もの定期預金の金利は現在のところ1.5%ですが、香港の金融機関では、1か月間ものは3.8%(HSBC)と4.0%(中国銀行)などで人民元預金を集めています。

株式市場でも、上海と香港、深センと香港に同時上場している会社は約100社数えられます。その大半は内陸の株価が高く、香港の株価は安いという現状であるにもかかわらず、香港での上場を維持するのには、香港は1.国際市場であること、2.国際投資家に認知してもらうこと、3.海外企業の買収や提携がしやすいことなどを理由に挙げられています。

「深港通」の開通発表に伴い、香港証券取引所の李小加総裁は、株式の相互直接取引に加え、今後ETFや人民元建て商品も増やしていきたいと表明しています。

A株が高いのは「希少価値」も一因だと指摘されます。国内で投資できる商品が少ない分、不動産に集中投資した結果、不動産の高騰を招いたとの説も聞かれます。それと比べたら海外には割安の投資資産がいっぱい見られます。そのためにも、国内の企業は香港の上場会社というプラットホームが必要ですし、個人は海外投資の口座が必要となってきます。香港経済の成長は期待できませんが、海外投資の窓口としての役割が今後も果たしていくことでしょう。

 

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「中国企業情報」は「深港通」の開通に備え、9月3日から発信開始します。前期は2月から8月まで全25回(新規は17銘柄、フォローは8銘柄)発信しましたが、「深港通」の開通で短期売買の銘柄も対象に取り上げてまいります。関心のある方は、当社HPをご参照ください。

 

 

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