香港不動産 輸入型インフレに警戒

今週月曜日(7日)、香港株式市場の不動産関連企業の株は一斉に下落しました。

新鴻基不動産(0016)は8.49%、長江実業地産(1113)は7.6%、恒基不動産(0012)は6.12%と不動産株の暴落と言っても過言ではない惨状振りだったのです。

 

暴落の背景には、香港政庁が先週金曜日(4日)、不動産印紙税に関する新政を発表したからです。

その新政とは、香港住民または法人で、自己居住用以外、二軒目の不動産を購入、登記する際、印紙税を一律15%まで引き上げることで、翌5日から発効するという内容でした。

 

居住用を強調するため、一軒目は従来通りの印紙税率適用を、また二軒目を購入後半年以内に、一軒目を手放した際、基本印紙税との差額を返還することも含まれています。

 

従来の印紙税率と言えば、二件目住宅購入の際、購入価格が300万~400万HKDの場合は4.5%、400万~600万HKDの場合は6%、672万HKD以上の場合、7.5%、2000万HKDの場合8.5%となっていますが、新政の下、一律15%が起用されることになります。

 

香港の不動産は昨年10月から今年の3月まで下落のトレンドでしたが、3月から上昇に転じ、香港政庁の発表では、9月まで累計8.9%上昇し、上昇幅も4月の0.7%から9月の2.8%へと拡大傾向で、10月は更にその幅が拡大されるだろうと言います。

 

「不動産は上昇し続ける予想が市場を左右し、不動産市場のリスクが高まると社会安定を破壊する」と印紙税引き上げの理由について政庁筋は解説しています。

 

香港不動産市場の高騰は南下(内陸からの)資金が絡んでいることがほぼ間違いありません。10月香港の非居住者による不動産購入件数は14ヶ月振りに高い250件で、6月~9からの平均よりも36%高い水準で、印紙税だけで5億HKDを超えたということです。

 

外来資金による不動産の高騰を抑制するため、香港政庁は2010年10月、不動産投資移民の政策を見直し、それまで650万HKDを不動産に投資すれば、香港版グリーンカードを申請することができたのですが、それを1000万HKDまで引き上げられ、投資対象も株式、債券、保険などまで拡大しました。

 

2003年に始まった投資移民政策が2014年まで合計23176件の申請を受理、許可し、香港に2000億HKD以上の投資を導入したのです。しかし不動産の価格は高騰を続け、市民の不満も噴出しているもあって2015年ついにこの投資移民政策の中止が発表されました。

 

しかし、米FRBによる利上げ観測、大統領選挙、国内経済の構造転換など通貨人民元安予想で資金の海外流出は留まりません。言葉も通じる香港が一番の候補地で、流出先には、不動産、株式、保険など様々とあります。これら資金の受け皿として当然市場は高騰し、輸入型インフレを作ってしまいます。

果たして15%の印紙税で不動産市場の高騰を食い止めることができるのか、注目して見たいと思います。

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