「本業があって株価をチェックする時間がない」と先日ある投資家が来社し、株価の変動が激しく、チェックするのに間に合わないことを「告白」されました。
本業があることはこのブログの読者の大半に当てはまることです。また香港株式市場は東証のようなストップ安やストップ高という制限制度はありませんので、ネガティブ情報でも出ると瞬時に5割や8割でも暴落することも珍しくありません。
「見える景色の向こうを見よう」というのが、邱先生が残してくれた言葉です。常に先々の情報をキャッチし、世の流れを読み、早めに判断しようというご宣託です。
高度成長時代には、3年や5年先まで大よそ読み取れたのですが、金融危機の後、世の流れが荒くなり、不安定な要素が相まって、1年や半年先を読み取るのにも苦労する時代となっています。
代表的な例には、米連邦準備理事会(FRB)の政策金利の引上げ判断です。米経済が復活し、新興国を含む世界経済も復調の段階にあると判断して昨年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、9年半ぶりに0~0.25%から0.25~0.50%へと利上げを決定しました。
ところが、新興国通貨の対米ドル為替は一斉に下落し、市場からの資本流出が止まらず、新興国経済は大打撃を受けてそれがまたモンブランのようにアメリカ経済に影響を与えた結果となり、先月のFOMCの政策決定会合では、4月の利上げ見送りとなったのです。
同じことで、今年1月、米バンクオブアメリカ ・メリルリンチは「2016年は中国投資家にとって最も危険な年だ」というレポートを発表しました。その根拠として挙げたのが金融安定を支えるための政府による「見えない保証」にあるとしています。
その「見えない保証」とは、1) GDPの大幅な下落をマクロ政策で防ぐこと、2) 人民元の大幅な切下げをしないこと、3) A株市場の乱高下を未然に防ぐこと、4) 大型デフォルトを発生させてはならないこと、5) 不動産相場の崩壊をさせないこと、です。
しかし、これら「見えない保証」は将来生じうる崩壊による破壊力を増大させる危険が潜んでいるとメリルリンチは指摘しました。
ところが、同じくメリルリンチは先月20日のレポートで「中国の大勢に逆らうな」として、「中央銀の金融緩和策は効果が出ている。とりわけ不動産価格を押し上げる面において」と中国の利下げと準備率引下げを評価し、「中国売り」を一転させたのです。
国際通貨基金(IMF)は昨日(3日)、最新の世界経済見通しの中で、アジア太平洋地域の展望について今年と来年の中国経済成長をそれぞれ6.5%と6.2%と今年1月に予測した2016年の6.3%の成長を0.2%引き上げたのです。成長率予測の引上げは全対象国の中で中国が唯一であることが注目されています。
このように経済の長期予測が専門機関でも難しい時代です。投資家としては常に最新情報の更新を心がけることが求められます。
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