これが危機と言わなければ

「The Big Short」(邦訳:マネーショート 華麗なる大逆転)は、米住宅市場の崩壊を予想してCDSなどの金融デリバティブ商品を運用(空売り)してそこから莫大な利益を上げたウォール街を舞台にしたストーリーで、それに「華麗なる大逆転」と付けられるのには、いささか違和感があります。

 

それはともかくとして、デリバティブ商品として中国に導入したことは債券の償還延期や市場の暴落を予想したら空売りでヘッジすることもできるようになることが法的に承認されたことになります。

 

では、いまの中国の不動産市場はどのような状況になっているのでしょうか。日本の経済紙も時々取り上げられていますが、上場会社の実例を見てみましょう。

 

北京の新聞「京華時報」の統計によると、上半期の決算が出そろった上海、深セン両証券取引所の2917社の上場企業の内、純利益が1000万元未満の会社は21.49%を占める627社になっていることが明らかになっています。

通年を見てみますと、2015年の本決算で当時2827社の内、16.55%に当たる468社の純利益は1000万元以下ということが分かっています。

 

以下のような実例が巷でも話題となっています。

深センB株に上場している南京に本社のある普天通信(略称「ST寧通B」 証券コード:200468)は9月21日付け最新公告を発表しました。

それによると、同社は北京不動産取引所において、同市内にある同社名義の不動産(マンション)2ユニットを売却するという内容です。

 

中国株の投資家はご存知の通り、STが付けられると、日本でいう監理ポスト入りという意味で、3年連続の赤字の可能性になる企業には、STが付けられ、黒字転換できない場合、上場廃止になるという規則があります。

 

ST寧通Bは、テレビ会議用のモニターや通信機器などの製造で業界でも認められる実力のある会社でしたが、近年業績不振で2014年から2年連続赤字となっています。2016年上半期も減収減益で、赤字額は2110万元。このまま本決算を迎えると、上場廃止という運命になると見られていました。

 

ところが、同社2004年に129万元(帳簿上)で購入した北京市内の2ユニットのマンションは学区内にあるため、現在の評価額は約16.5倍増の2272億元、売却できたら上半期の赤字を穴埋めすることができて上場廃止から免れるだろうと目論んで売却に踏み切ったものと見られます。

 

前出純利益1000万元未満の会社の内、208社もその貸借対照表に投資用不動産が実物資産として記載されています。

 

株式情報のiFinDによると、9月28日まで、A株上場の73社が本業不振の穴埋めとして保有投資不動産を譲渡し、さらに上場企業の半分近くの1305社に不動産取引の記録が残され、取引金額は5951億元に達していると言います。

 

日本のバブル時代には、不動産神話が蔓延り、地方の企業も首都圏など大都市近辺に不動産を買い漁る時代がありましたが、それをさらに上回る勢いで膨らんでいるのが今の中国の不動産市場です。

「バブルは崩壊しなければバブルとは言えない」と言われますが、しかし、これが危機と言わなければ何が危機というのでしょうか。

 

 

<勉強会のお知らせ> 

次回の中国勉強会は10月6日(木)銀座の天厨菜館で開催します。 

中国株式市場の最新情報を知りたい方や投資の達人との情報交換をしたいという方もどうぞご参加ください。

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